第76回
第76回MURオープンゼミナール
日 時
内 容
場 所
2004年10月2日13:30~15:00
延焼シミュレーションによる高山市三町伝建築地区の防災性能評価
報告:京都大学大学院 樋本圭祐
神戸大学工学部総合研究棟3号館125室
(参加者 18名)
<報告>
1.密集市街地と都市火災
木造密集市街地の災害に対する脆さ
:狭小な道路、耐震性・耐火性の低い住宅、複雑な権利関係、零細な敷地、高齢化
火災安全対策の課題
:地域の特性に応じた火災対策
2.都市火災の延焼シミュレーションモデル
既往のモデル:経験的知見に基づく
今回のモデル:物理的知見に基づく
3.高山市三町伝建地区の防火性能評価
ⅰ.火災安全対策の経緯
・ブロック単位の警報システム
・水路を利用した消火活動
・2方向避難経路(土蔵の隙間)
・屋根の不燃化(木板→亜鉛鉄板)
・延焼遮断帯(土蔵の並び)
ⅱ.延焼シミュレーション
延焼の特徴
:区画の反対側への延焼は抑制(土蔵の連なり)
壁の燃えぬけによる延焼経路の発生(壁の防火性能)
防火対策の効果の定量的評価
:単なる計算ではなく、対策の選択肢とその効果を示す
対策の実現可能性の検討(予算、安全性、…)
防火性能を向上する具体的な技術の開発が必要
ⅲ.火災リスク評価
これまでの延焼計算:条件設定が経験的、計算結果の意味?(最大?平均?)
火災リスク計算:被害の統計的性質を把握、想定されるシナリオを網羅
リスク(R)=損失の発生確率(P)×損失(L)=損失期待値(P×L)
<議論>
Q.出火発生場所の設定は?
A.地区内建物からランダムに設定(今回は試行回数N=367)
Q.消防力、消防水利を加味した評価は?
A.今回のモデルでは可能。消防力、樹木等の影響も今後考えていく予定。
Q.防災まちづくり総プロで提案されているモデルとの違いは?
A.総プロモデルでは、燃えぬけが考慮されていない(表面温度の上昇のみ)
→建物部材の性能上昇が考慮されない
→建物単体の防火性能上昇を評価できないのでは
Q.防災ブロック単位の警報システムにおけるブロックの設定基準は?
A.設定基準はわからないが、特に法律的な基準があるわけではないと思う。
伝建地区では防災計画を策定しなければならないので、その過程でハードだけではなくソフトも加えたシステムが提案された。
連絡先:神戸大学北後研究室
TEL 078-803-6440
MURオープンゼミナールは、広く社会に研究室の活動を公開することを企図して、毎月1回、原則として第1土曜日に開催しているものです。研究室のメンバーが出席するとともに、卒業生、自治体の都市・建築・消防関係の職員、コンサルタントのスタッフ、都市や建築の安全に関心のある市民等が参加されています。興味と時間のある方は遠慮なくご参加下さい。
Last Updated 10/05/2019 13:48:19