第66回

第66回MURオープンゼミナール

最近の地震、これからの地震について考えること

室崎益輝

■地震の予知と発生確率の評価について

・海溝型地震の長期評価の「確かさ」について

最近の地震でも、「確かさ」が確認される。

・前兆現象による予知の「科学性と信頼性」について

しかし、

場所は予知できるようになったが、

時間については、困難との見方となってきた。

でも、前兆現象は、バカにならない。

・東海地震と東南海・南海地震の「関係」について

東海地震 おきたりおきなかったりするが、

東南海と南海は連続して起きる。

最近は、東海地震は、東南海・南海との関連で起きるとされてきた。

それで、3つ同時発生も視野に入ることになった。

(名古屋大学 安藤雅孝)

■最近の地震の被害結果とその評価について

・震度と被害の関係について

倒壊率や出火率は、概ね誤差の範囲であるが

震度の割には、被害が少ないのは?

<理由1>

地震計の配置密度が高くなり、観測精度が上がったことと、

それと、かつては体感(被害状況)から震度を決めていたので

高い加速度(高い震度となる)と観測されるようになったため。

<理由2>

たてもののつくりが丁寧な地域で、この間の地震が発生した

ため。

今回の宮城県沖の出火率は、0だった。

全壊の戸数が1000棟なので、0は想定どおり。

(誤差の範囲内)

・危険物施設の被害(とくに出光・苫小牧)について

危険物災害の急増が懸念されていた

根拠は、平成6年(1994年)頃から、危険物災害が増えていた

施設の老朽化、保安要員の削減などが要因として考えられる。

今、防災コストを節約しはじめている。

結果として、今回の出火が起きたと考えられる。

今回の事業所だけの問題ではない。

起きたときにどうするか考えておかないといけない。

阪神の時、危険物の災害が少なかったため、いま、抜け落ちている。

津波との関係 コンビナートに波が入ってきたとき 強度は?

・今回、宮城県沖地震でのブロック塀、壊滅的に倒壊

夏休みで通学していなかったので、子供が被災しなかった。

■次の地震に対する被害想定の見方について

(このあたりから、より深刻な問題です。)

・国等の被害想定の「確かさ」と「不確かさ」について

過去のデータをどう読み取るか?

その誤差をどう理解するか?

科学技術がそんなに進歩していない。

予測の予算の9割を地震動と津波の高さに振り分けている

このあたりはある程度、正確

ミクロな地盤情報が入っていないので、正確な予測ができない。

家屋倒壊 倍、半分の誤差がでる

出火件数 桁違いの誤差がでる

ひどい予測 あやまった科学の適用をしていることの問題。

最大の問題は、阪神大震災の因果関係を、

(これは、特殊なケース)

次の地震にもあてはまると考えている。

予測の仕方は、旧態依然である。

倒壊率と出火率の回帰式で単純にしてしまっている。

新しい出火の予測式が必要。

たとえば、阪神では都市ガスが中心だったが、

(裸火を使っていなくても出火)

プロパンガスでは、ほとんど出火していない。

建物倒壊率 たまたま 西宮の倒壊率のデータで

加速度と倒壊率の関係で、全国を予測している。

加速度400ガルでの倒壊ない

その他の地域で、200~300ガルで倒壊している事実がある。

城之崎で予測して、倒壊が0となってしまう。

阪神・淡路大震災の延焼速度は、一番古い浜田式が合う。

重要なことは、阪神だけでなく過去のデータで、合う必要がある。

被害想定の結果、

大雑把なイメージではよいが、一人歩きしては困る。

火災の出火件数の予測式 が今、求められている。

・被害想定の結果の「活用」について

被害想定の結果、

高知、和歌山 警戒心を与えている

悲観的に想定して、楽観的に備える

(防災対策をすれば、楽観的にすることができる。)

被害を0にするための工夫が必要 ただし、20年かかる

「防災対策の目標としての被害想定」とすることが重要

■次の地震に対する備えの基本方向について

・東海地震等の地震対策大綱について

対策のメニュー

個別的、羅列的

予防的、都市の危険な体質の改善のとりくみがまだ少ない

たとえば、出火する火災を1/3とするにはどうするか。が重要

火事が起きなければ、全体の対応が楽になる。

住宅の耐震化のかきぶり、これで十分か

津波に目を奪われている。

地域の防災力の向上は、よい。

議論

コスモは大丈夫だった。会社の体質の問題があるのではないか。

指定地域に入ったが、財政難なので困る。

→ 強化地域でなく、推進地域

不景気な時代、お金のない時代の防災対策

ソフトな計画を作るしかない

どのように歯止めをかけるか真剣に考える必要がある。

被害想定 きめ細かいものがないのか

国のものは、非公開で細かなものがある。

しかし、ミクロベースの自信がない。これを足し合わせて

全体の被害予測としているが。合計すると、誤差が吸収される。

兵庫県が被害想定がしているが、国が出しているものと数値が違う

自治体はどちらを考えればよいか。

地域の実情に応じて、被害想定をして対策をするのが望ましい。

地元の実情をよく知っている。のが重要。

国の予測は、推進地域を選ぶことと、国レベルの応援体制の構築を目的としている。

都道府県レベルの対応のための被害想定ではない。

あと、推進地域の指定、これから、来年の春までに対策を進めていくことになる。

各自治体が、重点項目については20年を考えてやりきることが重要です。

(記録 北後)

連絡先:神戸大学室崎・北後研究室

TEL 078-803-6009 または 078-803-6440

MURオープンゼミナールは、広く社会に研究室の活動を公開することを企図して、毎月1回、原則として第1土曜日に開催しているものです。研究室のメンバーが出席するとともに、卒業生、自治体の都市・建築・消防関係の職員、コンサルタントのスタッフ、都市や建築の安全に関心のある市民等が参加されています。興味と時間のある方は遠慮なくご参加下さい。

Last Updated 10/05/2019 13:48:18