第260回

<第260回 神戸大学 RCUSSオープンゼミナール>

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日 時:2020年9月19日(土)14時~17時

視 聴:ライブ動画配信

司 会:神戸大学都市安全研究センター教授 滝口 哲也

共 催:神戸市危機管理室、神戸市消防局

神戸大学減災デザインセンター、神戸大学未来世紀都市学研究ユニット

① 在宅医療の進歩とその課題

高田 哲 神戸市総合療育センター診療所長

神戸大学名誉教授

在宅医療の進歩に伴い、これまでは長期にわたり入院を余儀なくされていた人々が自宅で家族と生活することが可能となってきた。最近では、経管栄養や口腔内・気管内吸引だけではなく、在宅人工呼吸器や、在宅酸素療法に支えられて、重い障害を持つ人々や高齢者が地域コミュニティで暮らすようになっている。

一方で、災害時において、これらの人々に対する避難行動支援は極めて大きな課題となっている。残念なことに多くの市民は、なぜそのような特別なケアが必要になるのか、日常の生活において誰がどのようにこれらのケアを担っているのかについて十分な情報を持っていない。今回のRCUSSオープンゼミナールの前半部では、食べることと呼吸機能に焦点をおいて、医療的なケアがなぜ必要とされるのかについて説明する。また、これらの人々が新型コロナウイルスなどの呼吸器感染に対して極めて弱い存在であることを示したいと思う。さらに、小児科専門医の立場から、重篤な障害は持たないが、社会的なコミュニケーションや認知面においてハンディをもつ人々が災害時に直面する課題についても提言したい。

PDF形式:配布資料

📺ライブ動画アーカイブ: https://youtu.be/gyD2ZNvfun0?t=1

② 災害時における支援(医療専門家としての提言)

木村 重美 兵庫県立リハビリテーション中央病院子どものリハビリテーション

睡眠と発達医療センター副センター長

神戸大学大学院医学研究科医学研究員

ゼミナールの前半部において示されたように、在宅医療は、電気をはじめとしたライフラインの安定的な供給、安全に介助してくれる家族・支援者の存在を前提に築かれている。いったん大規模な災害が生じ、電気などのライフラインが停止すると、在宅人工呼吸器、在宅酸素療法を必要とする人々は、生命の危機と直面する。これらの人々の避難行動をいかに支援するかは極めて難しくかつ重要な課題である。一方で、小児科医療と成人医療とには対象とする疾患に大きな違いがある。災害時に都道府県に設置される保健医療調整本部では、子どもの専門家と成人の専門家が一緒になって避難計画や医療的対応を考えるようになっている。最近では、「災害時小児周産期リエゾン」という小児科のチームがDMAT(災害派遣医療チーム)、DPAT(災害時派遣精神医療チーム)と協力して対応を考えるようになってきている。さらに、日本小児科学会と日本小児神経学会では「災害時小児呼吸器地域ネットワーク」の結成を呼び掛けている。ネットワークに参加している医療専門家に日常診療においても情報交換やカンファレンスを行うことを推奨している。今回の講演では、これらの仕組みを紹介するとともに、新型コロナ感染症下での支援・隔離体制についても考えてみたい。

PDF形式:配布資料

📺ライブ動画アーカイブ:https://youtu.be/gyD2ZNvfun0?t=4832

訂正:

講演中に提示した「災害時小児呼吸器地域ネットワークの代表者

が決まっている県の日本地図」について、下記の通り訂正します。

訂正前 訂正後

奈良県は決まっている。→ 奈良県は決まっていない。

広島県は決まっていない。→ 広島県は決まっている。

第260回アンケート結果(回答者数11名/参加者数56名)