第175回

■日時:2013年9月28日(土)14:00~17:00

■場所:神戸市役所4号館(危機管理センター)1階会議室

神戸市中央区江戸町97-1 Tel.078-322-5740

■司会:神戸大学都市安全研究センター教授 北後明彦

■参加者数:38名

■内容:

① 津波浸水域で発生する火災の地域的特徴と危険度評価手法について

今津雄吾 清水建設株式会社技術研究所

東日本大震災では、多くの津波浸水域で火災が発生した。従来、津波避難ビル等の整備や指定は、地震・津波に耐えて安全な空間を確保することを主眼に行われてきたが、震災の事例で明らかとなったように、津波直後は浸水や漂流ガレキにより十分な消火活動が行えないことや、2次的な避難も困難となることから、火災に対する安全性確保も重要な課題となっている。

津波による火災は、燃料タンク等の危険物施設が存在しない一般の住宅地でも多数発生しており、決して特殊な現象ではないが、大まかにはその地域で発生したガレキの量や漂流・滞留挙動に関係しており、地域によって火災発生の有無や延焼規模が異なる状況が見られた。

本講演では、東日本大震災での火災事例をもとに、地形、津波高、住宅密度などの違いによる火災発生状況の特徴について分析した結果と、津波漂流物予測シミュレーションを活用した津波火災の危険度を評価する試みについての紹介があった。

質疑応答では、大都市を対象とした津波火災に関する課題について問われ、津波ハザードマップは出されているものの、津波火災は考慮されていないのが現状であるとの説明があった。また、津波火災の発生は地域性の違い(住宅の密集具合や構造等)によるため、地域ごとに考えていかなければならないとの回答があった。

② 地震動の増幅特性とその評価法について

長尾 毅 神戸大学都市安全研究センター教授

(リスク・マネジメント研究部門社会基盤マネジメント研究分野)

地震による被害に密接に関連する項目には、①地震動(どのような地震が起こるか)、②地盤構造(どのような地盤を地震波が伝播するか)、③構造物の耐震性(どのような地震動に対して安定であるように設計・施工されているか)がある。そのため、地震の規模が同じであっても、地震動の伝播過程が異なると構造物への影響が異なる。これは一般に地盤条件の差として理解されることが多いが、地盤条件として浅部地盤条件と深部地盤条件の2種類を考慮する必要がある。浅部地盤条件は構造物の建設時に地盤調査が行われることが多いが、深部地盤条件は詳細な地盤調査が行われることはほとんどない。

本講演では、2011年東北地方太平洋沖地震における被害状況などの実例を示すとともに、ボーリングなどの土質試験を行うことなく地震動の増幅特性を評価する方法について概説された。

また、ボーリングデータなどが得られていない場合は,常時微動観測が地震危険度判定に有力なツールとなるとの説明があった。