第169回

■日時:2013年2月23日(土)14:00~17:00

■場所:神戸市役所4号館(危機管理センター)1階会議室

神戸市中央区江戸町97-1 Tel.078-322-5740

■参加者数:23人

<プログラム> (司会:神戸大学都市安全研究センター教授 北後明彦)

① 台湾の多文化と災害復興

陳來幸 兵庫県立大学経済学部教授

② 台湾における住宅復興の課題

―921震災と88水害の復興に関連して

垂水英司 兵庫県建築士会顧問(元神戸市住宅局長)

③ 広域巨大災害における住宅復興の課題

-米国ハリケーンカトリーナ災害と東日本大震災-

近藤民代 神戸大学大学院工学研究科准教授

① 台湾の多文化と災害復興

陳來幸 兵庫県立大学経済学部教授

台湾は様々な民族集団が存在する複合的な移民社会である。1999年に中部地域で発生した921地震では、福建南部を出身地とする主流の台湾漢民族のほか、異なる言語体系をもつ客家と山間部の先住民族にも被害が集中した。そして、近年急増している外国人花嫁たちの多くも被害にあった。2009年の集中豪雨が引き起こした88水害では南部高雄市に流れ込む河川の上流で土石流と深層崩壊が起こり、平埔族の小林村を中心に大きな犠牲者が出た。そして、「危険」を理由に生活の場から引き離された先住民族は多くの問題に直面している。被害と災害復興は社会の矛盾を浮き彫りにするといわれる。社会的弱者としてのこれらエスニックコミュニティの生活再建の方法に関し、どのような施策が考案され、いかなる世論が形成されたのかについて報告があった。

② 台湾における住宅復興の課題

―921震災と88水害の復興に関連して

垂水英司 兵庫県建築士会顧問(元神戸市住宅局長)

921震災の住宅復興では、現金支給や低利融資などの自力再建支援に重きがおかれ、早期に対策が打ち出されたが、自力再建能力のない人に 対する公的住宅の供給は遅れ、この点では実効性ある施策にならなかった。一方、88水害では、政府と大きな慈善組織などの協働による復興住宅 の建設が早期に実行に移された。しかし、これは被災地(特に原住民集落)と復興団地が離れるなど、さまざまな問題を惹起することになった。台湾の事例を踏まえ、日本の問題とも関連させて住宅復興のあり方の論点が示された。

③ 広域巨大災害における住宅復興の課題

-米国ハリケーンカトリーナ災害と東日本大震災-

近藤民代 神戸大学大学院工学研究科准教授

住宅復興には多様な被災者に対する、多様な選択を可能にする住宅再建支援の仕組みが必要である。阪神・淡路大震災では、主に高齢者、低所得者、借家層を対象とした災害復興公営住宅が主な住宅再建支援の柱であったが、東日本大震災で失われたストックはそのような方法のみでは再生できない。被災者の住む力を生かし、地域がまとまって住宅復興を進めていく方法が求められている。災害前の地域生活空間を継承しながら、より安全な居住環境をどのように再生していけばよいのかが問われている。米国ハリケーンカトリーナ災害と東日本大震災の被災地を事例として住宅復興の課題が提示された。