第168回

■日時:2013年1月26日(土)14:00~17:00

■場所:神戸市役所4号館(危機管理センター)1階会議室

神戸市中央区江戸町97-1 Tel.078-333-0119

■参加者数:36人

■内容:

① 災害と母子支援-助産師への聞き取りを中心に

松岡 悦子 奈良女子大学大学院人間文化研究科教授

② 災害時と平時における妊産婦支援のあり方について

田間 泰子 大阪府立大学人間社会学研究科教授

③ 歴史の継承と東日本大震災

長 志珠絵 神戸大学大学院国際文化学研究科教授

① 災害と母子支援-助産師への聞き取りを中心に

松岡 悦子 奈良女子大学大学院人間文化研究科教授

本報告では、まづ、東日本大震災をうけて策定された地域防災計画における妊産婦の位置づけについて説明があった。次いで、災害時の支援が機能するためには平時の支援ネットワーク構築が肝要であるとの考えから、地域を選んで、平時の妊産婦支援の取組が紹介された。最後に、東日本大震災における妊産婦の状況と支援のケーススタディが紹介され、災害による変化が示された。

② 災害時と平時における妊産婦支援のあり方について

田間 泰子 大阪府立大学人間社会学研究科教授

東日本大震災後に、福島県、茨城県、宮城県で助産師をはじめとする医療職の人々と母子に聞き取り調査が行われた。そこから見えてきたのは、災害時 において平時の問題が顕在化することであり、ジェンダー規範や現代家族の状況が増幅して現れることだった。このことは、災害をきっかけとして 日常を見直すことにつながるが、出産・育児期に関して言えば、ハイテクよりロウテク、集中化より脱集中化を見直すことにつながったと思われる。たとえば産み場所についても病院への集中化よりも地域に産み場所があることや、出産方法についても自然に産むことの重要性が明らかになっ た。また専門家や施設に情報や能力が集中化するよりも、地域住民の中に情報や力があることが重要と思われた。

③ 歴史の継承と東日本大震災

長 志珠絵 神戸大学大学院国際文化学研究科教授

東日本大震災のキーワードとしての「津波」は「tunami」という普遍的な用語を持つ。あるいは三陸地域は近代以降に限ってみても、津波多発地帯として知られている。ただし学術用語としての「tunami」の登場は昭和期とされるうえ、震災イメージとその対策は主に大都市の直下型地震に向けられてきた。一方で日本の近現代史は災害史の時代であり、地域の記憶や人びとの生にその受難の歴史を刻んできたが、深刻な災害からどのように個々の人びとが身を守るのか、被害地域をこえ、社会全体に共有されるしくみが整えられてきたわけではない。過去の災害経験がどのように語られ、記録として残されてきたのか、そしてそのことが次世代社会とどのような関係を結ぶのか、近代の災害史に関する歴史研究を通じた報告があった。