第155回

日時:2011年11月26日(土)14:00~17:00

場所:神戸大学工学研究科 C1-301

内容:

①福島県における広域避難者の現状と支援に向けて

福島大学災害復興研究所准教授 丹波史紀

②岩手県大船渡市における復興計画策定について

神戸大学工学研究科建築学専攻教授 塩崎賢明

参加者:34人 (北後)

①福島県における広域避難者の現状と支援に向けて

福島大学災害復興研究所准教授 丹波史紀

福島県では、原発事故により県内外で約15万人が避難生活をしており、そのうち県外避難者が5万8千人以上(当初3万6千人)である。県内避難者の場合、支援は仮設住宅に居住する避難者に対しては行われているが、民間借上げ住宅に居住する避難者への支援が手薄である課題が指摘された。県外避難者の場合は、就労・子育て・健康・情報の面でさらに困難を極めている実態がある。6~7月に実施した東京に避難した避難者へのアンケート調査(回答者数は約200世帯)では、半数以上がふるさとへ帰りたいと思っている事や、夫だけが福島県に残るという、母子避難に伴った二重生活の困難さが把握されている。9月に実施した福島県双葉地方8町村(全域が避難指示圏)の全世帯調査では、若い子育て世代の場合、半数以上が被災地に戻らない意向を示し、高齢世代になるに従い元の地域に戻りたいと考える割合が増える。放射性物質の影響への不安や避難の期間がわからず今後の住居・移動先の目処がたたないために、今後の生活再建が困難となっている実態が報告された。今後の災害復興に向けては、なによりも人びとのくらしが再建できることが必要であり、今後のフェーズとしては仕事づくり・雇用対策が重要である。また、離れる人・とどまる人のそれぞれの「選択」を尊重し、ふるさとに戻ることができる条件を取り戻す努力により原発事故からの再生をはかるべきである。

②岩手県大船渡市における復興計画策定について

神戸大学工学研究科建築学専攻教授 塩崎賢明

能登半島地震の復興では、限られた生活再建支援金に諸補助金が積み上げられ、自力再建が進み、公営住宅希望者が減った事例があるが、東日本大震災の被災地では支援金がどこまで積み上がるかが課題である。一方、岩手県の住田町や福島県会津地方での現地調査では,長期的生活及び移築・増改築を想定した優良な木造仮設住宅の事例が見られた。能登半島や東北の木造住宅の実績を踏まえ、今後、仮設から恒久住宅への連続復興を目指すべきであり、その際、災害救助法適用による自力仮設住宅支援をはじめ自力再建支援を基本とし、復興公営住宅はそれを補うものとして計画・設計・入居方法に細心の注意が必要である。大船渡市の復興計画については、津波により流出した世帯では津波からの安全を希求して多くの住民が高台移転を希望しており、津波シミュレーションに基づく評価を援用した防波堤・防潮堤・2線堤による多重防御計画、盛土、高台移転、平地の土地利用制限などによる安全確保を考慮した復興まちづくりの大枠が検討された。個々の地域・集落では、それぞれで計画づくりができる体制になっているか、合意形成の仕組みが重要であるが、今後、様々な合意形成の仕組みでそれぞれの条件に応じて復興まちづくりの実施方法が具体化され決定されて行くであろう。農地・宅地の土地利用再編の規制緩和や津波防災地域づくり法案等、従来では出来なかった制度が復興まちづくりに活用されることになるが、高台移転で仕事ができるか、雇用はあるか、漁港集約化、漁業特区の問題、個人の住宅再建資金、移転後の住宅地にサステイナビリティはあるか、人口減少傾向によるインフラの管理費負担問題等、合意形成に際しての検討課題は多い。