第149回
日時 :2011年4月16日(土)14:00~17:00
場所 :神戸大学 工学研究科 C1-301
参加者:24名
内容:
①被災地の住宅セーフティネットにおける「孤独死」の発生実態とその背景
-阪神・淡路大震災の事例を通して-
田中正人(株式会社 都市調査計画事務所 代表取締役)
②被災者支援のコミュニケーション―「つぶやき」を受け止めること
藤室玲治(神戸大学都市安全研究センター 学生ボランティア支援室 コーディネーター)
①被災地の住宅セーフティネットにおける「孤独死」の発生実態とその背景
-阪神・淡路大震災の事例を通して-
田中正人(株式会社 都市調査計画事務所 代表取締役)
阪神・淡路大震災の復興過程においては,仮設住宅・復興公営住宅あわせて1,000人近い入居者が「孤独死」を遂げたと言われる。ただ注意すべきは,問題の核心は「孤独な死」それ自体にあるのではないという点である。「孤独死」に至る以前の,誰からもアテンションを向けられない,よってその死を認める者もいない社会的に孤立した「孤独な生」,そこにこそ目を向ける必要がある。
主要な論点は次の5つ。(1)被災地の復興の進展は,社会的な孤立の果ての「孤独死」を減じてきたか。(2)「孤独死」問題は高齢者問題に収斂するか。(3)「孤独死」は被災地に限った問題ではないと言い切ってよいか。(4)住宅・住環境の質とは無関係か。(5)見守り制度や交流促進プログラムは有効だったのか。
我々の分析によれば,これらはいずれも支持されない。「孤独死」は復興とともに収束には向かわず,高齢化問題にも回収されない。被災地に固有の発生メカニズムが存在し,そこには仮設住宅や復興住宅の立地・空間特性が介在する。人的な支援には基礎的限界があることを認めざるを得ない。報告では以上の点に触れるとともに,若干の提言についても言及した。
②被災者支援のコミュニケーション―「つぶやき」を受け止めること
藤室玲治(神戸大学都市安全研究センター 学生ボランティア支援室 コーディネーター)
災害ボランティア(被災者支援)の本質は物資や労力の提供ではなくコ ミュニケーションである。なぜならば、被災して傷ついている人の真の ニーズ は、自分の状況(苦境)を他者に理解してもらうことであるからだ。被災者とボ ランティアがコミュニケーションを取る関係がまずあり、その上 で労力や物資 が提供されることで、被災者の尊厳を損なわずにニーズを満たすことができる。 このことを、阪神・淡路大震災の際のテント村や仮設住宅 でのボランティア活 動、能登半島地震以降の足湯ボランティア活動の実践から報告した。また平時に おける独居高齢者の孤独死予防(復興住宅での喫茶 活動や戸別訪問)や野宿者 支援(訪問活動や居宅移行後の居場所づくり)等においても同様の考え方が重要 であることにも触れた。