第146回
日時 :2011年1月22日(土)14:00~17:00
場所 :神戸大学 工学研究科 C1-301
参加者:34名
内容:
①大規模イベントの高密度群集滞留の予見が出来なかった要因対策としての群集流動と警備対策に関する研究 | 貝辻正利(神戸大学工学研究科博士課程)
②関西国際空港の防火対策 -安心の創造のために- | 山本信一(関西空港)
①大規模イベントの高密度群集滞留の予見が出来なかった要因対策としての群集流動と警備対策に関する研究
貝辻正利(神戸大学工学研究科博士課程)
明石大蔵海岸で開催された明石海峡世紀越えイベント「ジャパン・カウントダウン2001」で、会場と最寄りのJR朝霧駅を結ぶ朝霧歩道橋で雑踏事故寸前の高密度群集滞留が発生した。緊急警備措置の結果雑踏事故は回避されたが、この世紀越えイベントの約7ヶ月後に同じ場所で開催された明石市民夏まつりで歩道橋雑踏事故が発生している。そこで本研究は、世紀越えイベントの開催実態を分析することにより、高密度群集滞留の予見及び高密度群集滞留危機を回避出来なかった要因を明らかにすることを目的とする。
分析の結果、歩道橋での高密度群集滞留を予見出来なかった要因は、イベント構成主体をはじめ警察、消防、行政が、安全対策に関する各種情報を共有し、開催現場実態に基く会場適正など、警備対策をイベント総合対策と位置付けた検討と危険抽出による危険認識を共有しなかったことが要因である。
また、歩道橋での高密度群集滞留危機を回避出来なかった要因は、総合安全対策検討欠如等に起因する警備計画の検討不足、警備本部の機能不全及び警察との連携不足の可能性が大きい。しかし、早期に二次導線迂回措置や帰路一方通行を実施しても、歩道橋の目隠しなどの滞留防止措置がなかったため花火打ち上げ時の群集滞留と混雑範囲の拡大は回避出来なかったと推定される。
②関西国際空港の防火対策 -安心の創造のために-
山本信一(関西空港)
関西国際空港は、わが国初の本格的24時間空港として、騒音等環境対策を重点的に考慮した、また、最新の技術の結集をした海上空港として、1994年9月4日にオープンしました。
関西国際空港1期島には、511ヘクタールにもおよぶ広大な空港用地に、両翼1,660メートルにわたる旅客ターミナルビル、貨物ターミナルビルを中心に、およそ45棟におよぶ各種空港施設があります。旅客ターミナルビルは、1日の利用旅客者がピーク時8万人に達する大規模かつ最新鋭の都市機能を備えており、また、本土側と連絡橋一本で接続されている24時間空港の特殊性から、開港当時最新鋭の消防防災設備等が随所にわたって設置されており、その適切な運用と相まって高い水準の安全の維持が強く求められています。
しかしながら、いくら最新の消防防災設備等を消防法・建築基準法等で備えてもそれは防火に対して必要条件であり、それだけでは火災を防ぐことはできません。十分条件としてやはりそれを活用する人(空港に勤務する従業員等)の防災行動力の向上が求められます。
ところで、人間一般に見られる、時間の逓減とともに防災意識の逓減を巷間「防災意識逓減の法則」と呼ぶが、その対極にあるものを考えた時、おのずと「防災意識向上の法則」に思い至ります。ここでは、都市安全の観点から、関西国際空港の防火対策を推進し、実践のなかで見いだした防火防災の法則性について考察が示されました。また、副題に記した現大阪市消防局長岡武男氏の提唱した「安心の創造のために」という新たな理念が、日々の消防防災業務の推進にいかに役立っているかについても言及がありました。