第143回
日時:2010年10月30日(土)14:00~17:00
場所:神戸大学 都市安全研究センター 2階会議室
内容:
①1596年慶長伏見地震による須磨寺・兵庫の被害
都司嘉宣(東京大学地震研究所准教授)
②佐用水害からの教訓・・・減災の視点から水害対策を考える
室崎益輝(関西学院大学教授、神戸大学都市安全研究センター特別研究員)備考:参加人数 22名
①1596年慶長伏見地震による須磨寺・兵庫の被害
都司嘉宣(東京大学地震研究所准教授)
阪神・淡路大震災の399年前、1596年9月5日に発生したM7.5の慶長伏見桃山地震は、京都から淡路島までの範囲に大きな被害をもたらし た。この範囲は、阪神・淡路大震災の被害地域を含み、同地域でも重大な被害があったことが、古文書(李朝朝鮮の国史の証言、須磨寺の僧の証言な ど)で明らかにされている。このほかの歴史的な地震とその被害を考察すると、近畿地方で発生する地震のパターンとして50年程度の静穏期のあと 30年~40年程度の内陸地震が活発な時期をへて南海地震が発生し、その後10年程度の内陸地震が活発な時期をへて再び50年程度の静穏期とな る、つまり、約100年程度の周期で現象が繰り返されていることに留意する必要があることが強調された。また、地震のタイプにより同じ大阪湾周辺であっても被害の出方が異なること、過去の地震時とは違った状況、例えば埋め立てなどによる影響などを考えた被害予測による対策を行っておくこと が重要との指摘があった。
②佐用水害からの教訓・・・減災の視点から水害対策を考える
室崎益輝(関西学院大学教授、神戸大学都市安全研究センター特別研究員)
この災害からの教訓として、地域防災計画の限界と欠陥、小規模自治体の対応力の限界、過去の経験にとらわれた思いこみ、集落を含む組織間の連携の 不十分さ、防災装備などの維持管理の杜撰さ、避難勧告当の発令基準の曖昧さ等がある。また、同じ深さの水であっても早い流れのある水の危険性につ いて認識する必要があること、災害などの危急時には人間はミスを犯すこともあるが、ミスを犯しにくいシステム、環境としていく必要があること等が 示された。今後の対策としては、勧告の信頼性を高めること、ハイテクを用いた早期行動の促進、コミュニティをつなぐ新しいシステム、勧告による避難先での環境改善、及び、災害予防の方向性をとること等、減災の視点から考えることが重要との指摘があった。