第100回
第100回記念MURオープンゼミナール
■ 少子・高齢化に向けた安心・安全コミュニティ支援システム
―集合住宅を対象として― (村田)
少子・高齢化社会の課題
・ 地域コミュニティの衰退、地域活動を支える人材不足、地域経済の衰退
・ 地震、火災等への不安、犯罪に対する不安感
⇒災害や犯罪への不安感を解消するための地域コミュニティー支援システムの考案
地域コミュニティー支援システムの概要
・ 各住戸の空間状態を判断するモニタリングシステムとソーシャルネットワークシステム(SNS)を連携させる
⇒日常のコミュニティ支援と緊急時の情報伝達手段
・ 各住戸におけるモニタリング機能
…人感センサー、温度センサー、カメラ、マイク、スピーカーetc
「在宅」、「留守」、「見守り」モードごとに異常判定を行う
・ 各住間でのにおけるモニタリング機能(SNS)
…会員制ネットワークを通した「見る―見守られる」関係
システムの特徴
・ 情報の早期検知および伝達
・ 見守りを依頼したグループ住戸への自動通報
・ グループ間共助による避難・救助支援
質疑
事例では、マンション等の集合住宅が示されていたが、それをマンション1棟に限らず地域全体に適用してはどうか。
一企業の立場として、地域全体にシステムを投入していくことは難しいが、地域からの提案があれば適用していきたい。
■ 市街地火災安全性能の記述 (岩見)
市街地火災シミュレーションについて
・ 機能…市街地データや気象条件に基づき延焼拡大状況を計算する
・ 想定される利用場面…市街地の火災安全性能を向上させるために
計画案の評価、検討
協議会や住民ワークショップにおけるプレゼンテーション
建築基準法集団規定の性能基準について
・ 集団規定に関係する課題:市街地環境のあり方
・ 火災安全に関する社会的目的:人命と財産の保全
・ 目的を実現するための機能項目:建物・地域に求められるもの
道路空間と火災安全性能の関係について
・ 延焼シミュレーションを用いた接道・道路幅員条件の性能評価
・ 建物構造、階数、開口部条件による違いを検討する
質疑
建築基準法は、本当に財産を保全することをうたっているものかどうか疑問。法規の中でどういう性能を担保するのかがあやふやだが、改善される見込みはあるのか。
接道、道路幅員の性能評価は平常時だけでなく、地震時の場合の検討も必要である。
■ 阪神・淡路大震災の経験から見た今後の地震防災対策とは (越山)
阪神・淡路大震災の特徴:被害地域の集中=周辺から救済の可能性があった
この10年で得られたもの・変化したもの
・ 公助から自助・共助へ
・ 地震危険性把握技術の向上
・ 災害ボランティアの発展
・ 被害抑止から被害低減へ
今後の地震災害対策のテーマ
・ 巨大地震への備え:プレート境界型地震が3つの発生パターンで同時に起こりうる
・ 中山間地域の災害
・ 災害の広域性:静岡から高知まで広い範囲で地震と津波の危険性がある
大都市大震災復旧・復興プロジェクトにおける6つの視点(必要とされる戦略計画)
・ 長周期振動 (固有周期の長い高層建築への対応)
・ 住宅耐震化 (被害低減効果に向けて’前払い’で費用を投入すべき)
・ 広域災害 (行政の連携、情報収集とその後の情報配分の必要性)
・ 津波避難 (逃げないで住む町、逃げることができる町、逃がす仕組み)
・ 時間差で生じうる複数の地震への対策 (防災計画への反映は難)
・ 中山間地問題 (地域的孤立の可能性、復興優先箇所の決定、自立性の確保)
⇒今後30年の対策として反映させていく
質疑
阪神・淡路大震災の教訓を生かすというより、むしろそこで得られなかった要素を抽出することが大切。 すなわち、広域災害としてナットワーク(インフラ)の復旧にかかる時間の差異、 広域にわたる津波避難への対応を重視していくことが求められる。
過去の災害の教訓を生かすには、高層建築や大規模施設への技術的な対応が不可欠である。その遅れが生じた場合、使えない建物をどう運用するかも対策が必要。
■ 防災研究者の原点を問い直す ―求められる現場性と科学性― (室崎)
阪神淡路大震災は専門家にとって何だったか:技術者に問われるもの
・ 戦災:基礎科学のあり方を根本から問う
・ 震災:応用科学のあり方を根本から問うもの
⇒技術者は「本当の発展」を追求してきたか
これまでの科学技術と今後
・ 地震予知:
将来の予測は、過去の経験則だけでは不可能
⇒なぜ予測は外れるのか、その原因を追究する
・ 都市防火:
消す技術、守る技術の遅れと未熟さ
⇒どうすれば防げるか、対策を進める
・ 議論の公開:
リスクコミュニケーションの必要性
⇒行政と専門家と市民の交流と信頼を構築する
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科学技術は余談や偏見で左右されるものではない。現象を科学的に考察し、そこから法則を見つけだし、その法則性から社会を変えていく。
社会で起きているすべての事実が財産である。現場から事実を拾い上げていき、そこから何を掴むのか、それが技術者に求められる姿勢である。
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