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第85回

第85回MURオープンゼミナール
日 時2005年7月23日(土)14:00~17:00
内 容
災害多発時代の備えと復興
    塩崎賢明(神戸大学工学部教授)
場 所神戸大学COE神戸フィールドスタジオ
<神戸フィールドスタジオのご案内>
〒653-0041 神戸市長田区久保町6丁目
アスタくにづか4番館 東棟 302-2
tel:078-643-0456 
参加者45名
記 録林順平


災害多発時代の備えと復興



Ⅰ. 阪神大震災10年の復興過程
1. 10年を経た阪神大震災
 (1) さまざまな見解
 (2) 10年の総括・検証(兵庫県・神戸市)
  ・7,8,9年目の時にはわからなかったことがあるのではないか
  ・復興対策も備えの一環であり、復興からの予防がなされていない
  ・未来を見るためには、過去を見なければならない

2. 復興の光と影
 (1) 港湾…貨物量全体の減少、国内競争、国際競争、大水深の対応しない原型復旧
       日本のハブ&スポークですらなくなった
   高速道路…1年9ヶ月で復旧(予定より3ヶ月早く、比較的よかったのではないか)騒音対策、耐震対策はなされたが、高架式道路
       ⇒硬くなった分振動が増えた。騒音はよくなったかもしれないが、排ガスは変わらない
        地球環境対策、サステイナブルシティへの接近という視点から見てどうか
   鉄道…基本的に原型復旧。都市づくりの将来を見通した「創造的」構想なし
 (2) 人口回復;地域的偏在→長田はなお8割
 (3) 住宅復興
  ①非人間的な避難所(その場所さえ確保予定なしの自治体も多数)
  ②応急仮設…居住水準、コミュニティ破壊、孤独死233人、凍死や給水停止事件など
  ③復興公営住宅…立地、コミュニティ破壊、孤独死327人、滞納、見守り制度
   ○従前のコミュニティ⇒仮設住宅により一度壊され、仮設住宅の中でできかけていたコミュニティを再び壊すこととなった
   ○家賃が払えない→出て行かなければならない
    収入が上がる→家賃も上がる
   ○自営業者の借金の問題
  ④ 単線型政策へのアンチテーゼとしての自力仮設住宅…コンテナ利用など
 (4) まちづくり
  区画整理:ほぼ終了、空地問題   再開発 :新長田地区、24%の空き店舗、40-23棟
         特定建築者制度→民間にゆだねられる
         計画→早く規模を縮小したほうがよい
       「協働のまちづくり」
 (5) 営業・生活
   緊急災害復旧資金制度(金利2.5%で5000万円融資、33500件・4200億円貸し出し)
          15300件・619億円未完済、3900件・340億円代位弁済(返済など)  など

3. 「創造的復興」ではなく早期回復
 (1) 復興10年の総括的認識
   兵庫県+神戸市の94~04年一般会計(6兆8652億円)の72%は復興対策費、18%災害復旧費
 (2) 「創造的復興」の問題点
  1. 復興に光と影をもたらした
  2. 災害予防に障害
    開発的復興事業→自治体財政難
    小中学校の耐震改修を遅らせている

4. 将来の災害に拍車
  震災復興事業の石炭火力発電所(140万kw)
  地球環境悪化に寄与
 (3) 「創造的」=開発的復興でなく早期回復


Ⅱ. 災害多発時代
1. 大災害時代
 ①台風・水害 ②中越地震 ③スマトラ地震・津波 ④福岡県西部地震
 ●次の災害
  ①東南海・南海地震
    …長周期振動、小集落孤立型被害、宅地・地盤災害
  ②内陸直下型が今後も(プレート型地震の前後)
    …阪神大震災のエネルギー放出は数%、今後も30年間に起こる確率は「やや高い」
  ③高層住宅の安全性、欠陥住宅再生産
  ④地域防災計画の形骸化、予算組み事業化は1町のみ、会議も開かず
  ⑤台風との複合災害…異常気象、地球温暖化

2. 災害復興問題の論点
 (1) 開発的復興
     「創造的復旧」
      …中越復興ビジョン「旧を踏まえつつその上に新たなものを生み出していくこと」を柱に
      ・各国に共通する開発的復興―スリランカ、マレーシア、インドネシア
      ・原型復旧にこだわらないこと⇒生活再建
 (2) 住宅復興の支援制度
     「被害者生活再建支援制度」(1998)
      ・阪神大震災被害者の運動の成果
      ・問題点:要件が厳しい、住宅再建支援なし
      ・2004年改正。居住安定支援制度…住宅本体への資金援助なし
      ・適用事例が少ない。全半壊世帯の9割が対象外
     ●生活再建支援法の適用実態
      ・法施行以来、23の災害に適用
      ・全半壊=41822棟
      ・支給済み・申請中=3159世帯(7.6%)…04.12現在
      ・世帯主45歳未満、年収500万以上は対象外
      ・1市町村で10世帯以上が全壊でないと、対象外
      ・浸水被害は全半壊しなければ対象外
 (3) 自力仮設住宅を活かす
 (4) コミュニティの維持・再生
 (5) 災害復興基本法の必要性
      災害大国、復興についての基本法が不在
      既存法体系…積極面と問題点
        備荒儲蓄法(M11)、罹災者救助基金法(M32)、災害救助法(S22)
        災害対策基本法(S36)…地方自治体が主役、ボランティア規定⇒比較的良
        人権保障よりも社会的秩序維持に主目的⇒悪
        復興について触れず
      復旧と復興、原型復旧か改良復旧か、注文とマニュアル

3. 災害時代への備え
 (1) 予防・緊急対応・復興
 (2) 地域防災計画の問題(兵庫県下85自治体のうち65自治体の回答)
    ・災害対策基本法に規定、計画は全自治体作成(大半は阪神大震災以降)
    ・地域防災会議のみ開催…62%
     事業予算計画あり…1町のみ
     防災行政無線整備済み…55%
     ヘリコプター発着場整備…62%
     地域防災拠点整備計画なし…半数
     コミュニティ防災拠点整備計画なし…44%
     応急仮設住宅建設予定地なし…52%
    ・耐震補強必要住宅数の把握なし…54%
     耐震診断計画なし…46%
     公共施設の耐震化計画なし…23%
    ・自主防災組織率70%以上
     「安心できる」14%
     自治会・町内会単位が91%
 (3) 住宅の安全性確保、耐震改修
     ①耐震診断や家具の固定、避難路の確認
     ②阪神大震災後,、耐震改修促進法、特定建築物中心…小中学校でも49%
     ③一般住宅は限りなくゼロに近い
     ④先進地域、静岡県・横浜市内でもわずか


質疑
Q:自力仮設住宅は法的にはクリアされているのか、行政がやる場合、特例などはあるのか
A:確認は今のところできていないが、あやしいものもあるのではないか。プレハブなどの単体は、ある程度クリアされているだろうが、接道・隣接敷地などはまだ。制度化するとすれば、基準が必要となるだろう

Q:仮設住宅を建てる場合、自分の敷地に建てるのはどうか
A:周辺の敷地を集めて何世帯分かつくる、などはよいと思う。民地にできれば、仮設住宅の代わりになると思う。両方できたらいいと思う




連絡先:神戸大学北後研究室
      TEL 078-803-6440

MURオープンゼミナールは、広く社会に研究室の活動を公開することを企図して、毎月1回、原則として第1土曜日に開催しているものです。研究室のメンバーが出席するとともに、卒業生、自治体の都市・建築・消防関係の職員、コンサルタントのスタッフ、都市や建築の安全に関心のある市民等が参加されています。興味と時間のある方は遠慮なくご参加下さい。

Last Updated 10/05/2019 13:48:09

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