第81回MURオープンゼミナール
日 時 | 2005年3月5日(土)13:30~15:30 | 内 容 | 街区特性からみた犯罪発生構造 -伊丹市における犯罪マップの分析- 横山健志(大学院生) 防犯に配慮したまちづくり -自主防犯活動団体や民間企業の取組みから考える- 藤井貴弘(大学院生)
| 場 所 | 神戸大学工学部の食堂北側の3号館 (新しい建物) 125室 (1階、玄関から入り右奥へ進んでください。)
| 参加者 | 17名(一般12名、研究室5名) | 記 録 | 村上真樹子 |
横山健志 街区特性から見た犯罪発生構造に関する研究 
研究の背景 ・ 安全→地震、火災などが中心。犯罪に関する安全性を欠いている。 ・ 都市の物的構造のもつ防犯性能が重要 ・ 計画段階から防犯性能を考慮すべき
・犯罪企図者に犯罪をおこなわせないようにすることを目的とする ・ 物的環境のみではなく社会的手法ももちいられるようになった ・ 施策はまだ無理 ・ 犯罪発生件数少ない ・ 犯罪→普遍的な環境との因果関係を示す事ができない ・ ・調査研究の蓄積、不足している
目的 ・ 犯罪と環境の関係をあきらかにする ・ 研究の蓄積
方法 ・ 既存研究の生理 ・ 実際のデータを用いて関係をしらべる
CPTED ・ 物的環境、社会的環境の整備を通して、犯罪の減少、生活の質の向上をめざす ・ 犯罪企図者の機会の減少をめざす
犯罪と都市防犯 ・ 研究対象によって、心理的、社会的、局所基盤的、都市基盤的研究などのフェーズがある ・ 心理的→犯罪を起こすにいたる心理状況の分析 ・ 社会学的→社旗統制の崩壊、規範の喪失、コミュニティの性質の要素と犯罪発生との関係を追及する
都市基盤的研究 ・ 犯罪企図者・潜在的被害者の遭遇する場を研究対象とする ・ 潜在的な犯罪発生要因が顕在化した減少→犯罪の発生 ・ 漢方薬的効用である
地区特性と犯罪発生状況 ・ 伊丹市対象 ・ 既存の都市の変化に対応した対策が必要。伊丹市は新旧混合している地域である。
分析方法 ・ 町丁目別に多変量解析 ・ 地区特性データは表参照
GIS ・ 町丁目ごとに色分けして示すことができる ・ 面積、道路の長さなどのデータを比較することができる
相関関係による分析 ・ 罪種別認知件数と環境要素との関係 ・ 自動車関連の窃盗とひったくりでは環境との関係がことなる ・ 突出して大きな値はなく、さまざまな要因が関係しているようだ
主成分分析 ・ 第一主成分→人口、など住宅細密度 ・ 第二主成分→道路網細密度 ・ 第三主成分→道路がよく整備されている状態
主成分特性軸による分布図 ・ 人口、住宅密集度が高いところ ・ 街区細密度の高いところ →多発する傾向がある ・ 街区の細密度が低いところ→あまり発生していない
他の罪種について ・ 乗り物盗→犯罪対象の密集度
街区特性とひったくり発生状況 ・ 発生地点の半径100mを影響のあった環境とした ・ 街区ごとに特性との関係をしらべた ・ 60の発生地点について
街区形態に関するデータの集約
数量化Ⅲ類の結果 ・ 1軸→グリッドタイプ・街路が不規則 ・ 2軸→土地利用状況
タイプA ・ 駅から徒歩圏内 ・ グリッド状 ・ 最多発地域 ・ 駅の人ごみにまぎれられる
タイプB ・ 幹線道路から近い ・ 商業用地と住宅地混在 ・ 匿名性高い
タイプB ・ 農地。一般低層住宅地混在 ・ 人の動線があるが、空間的死角がある ・ 匿名空間である幹線道路との距離もちかい ・ 街区が細分化されている→逃走経路の選択しが用意されている
タイプC ・ 農地、低層住宅、中高層住宅混在 ・ 動線と空間的死角がある
タイプE ・ 幹線道路の近く ・ 商業用地と中高層住宅地が混在 ・ 入り組んでいる ・ 少ない人通り、匿名性、逃走の容易さ→危険
街区特性とひったくり発生構造 ・ 匿名性 ・ 少ない人通り ・ 空間的な死角 ・ 混在、近接していることが発生に関与
街区形態との関係 ・ グリッド状 ・ 不規則なパターン→袋小路が少ない場合 ・ 幹線道路と近いところ
都市構造上の問題 ・ 様々な都市要素が混在
課題 ・ 具体策に結びつかない ・ 100mについて検証が必要 ・ 郊外化の影響についての考慮
質問 ・ 侵入盗はずしたのはなぜ? →街区という要素よりは、建物単体の防犯性能が大きく影響してくる罪種だから ・ 犯罪者と地域との関係は?地域のものか、外部のものか。 →まだ検証していない。幹線道路との近さ、駅との近さ ・ 地理条件をどのように知ったのか、犯罪者は。 →地元の少年グループの影響があるとは思う ・ 街路灯、防犯とうとの関係もあるのではないか? →時間のデータがなかったため検討できなかった ・ 理論上多いはずなのに、実際は少ないエリアはないのか? →検討していない。発生していない地域の検討もしなくてはならない。 ・ 防犯とうを変えたら、車上あらしなくなった。明るさは関係あるのか。対策としてどうなのか。 →ミクロな検討していない。研究足りない。防犯とうに関する検討も必要。
藤井
防犯に配慮したまちづくり

研究の背景・目的 ・ 防犯まちづくり推進されている ・ 地域単位での防犯性能あげること、課題 ・ ソフト、ハードともに改善の必要あり ・ しかし現在はソフト中心、ハード整備遅れている ・ 費用がかかる、住民の意識による、効果が計れない→整備が進まない ・ ソフト活動を進める→ハード整備を可能にするのではないか ・ 現状把握が目的
調査対象 ・ 地方行政 ・ 自主防犯活動団体 ・ 民間企業
地方行政による取り組み ・ 2005年2月現在、15都道府県で安全なまちづくり条例制定済み ・ 制定まもないため、取り組み比較不可能 ・ 先進事例として大阪府にヒアリングをした ・ ハード対策、ソフト対策、推進体制 ・ ハードは指針を示す程度。模索状況。 ・ 推進体制、市単位の推進協議会 ・ 連携は検討中 ・ 条例をつくるまえは、防犯担当の部署なかった。条例制定を通して、明確になっていった。 ・ 以前は、援助金をだすことだけが業務だった ・ 今でも、防犯に特化した部署はなく、環境整備とかねていたりする ・ 行政内でも意識の差がある
自主防犯組織 ・ 基盤の組織をもとに活動 ・ 自然発生的な活動はない ・ 主要な基盤組織から発生した活動についてヒアリングした ・ 自治会が4割 ・ 登美丘地区でヒアリング ・ 登美丘地区→大きい、日本最大級のパトロールが行われている、センサーライトの設置もしている ・ 防犯委員長リーダー→警察に問い合わせ→警察から犯罪情報 この地域が犯罪が多い地域で ・ 防犯委員には事前に情報があった。地域住民は口コミで情報が広まった ・ 校長が参加するなど、学校との連携ができている
星和台の防犯パトロール ・ 車で行う ・ 防犯情報をアナウンスする ・ 短期的な効果はある ・ 参加者減少が問題点 ・ 空き巣多発地帯だった。警察に対策を相談。情報伝達の必要性を指摘された。 ・ 住民による活動
英田北校区 ・ 行政も協力的(モデル事業) ・ 島之内が最初の推進協議会を作った ・ 他の地区も取り組みに参加
伊吹台東町 ・ 住民、強制参加 ・ 犯罪が多いわけではない。地域を知るという目的も大きい ・ 自治会がなかったが、阪神淡路大震災の後、仮設などの外部の人たちが増え、コミュニティの欠如に気がついた。須磨の事件が起きて、子供の安全について意識も高まった。 ・ 連合自治体独自の取り組み。連携はあまりとっていない。
灘防犯協会 赤坂支部 ・ 見張り番運動 ・ パトロールは負担が個人に集中するため ・ 赤坂支部内で空き巣が多発、住民がパトロールを行うが負担が大きかった。防犯協会赤坂支部に相談した。見張り番運動への発展へ。 ・ 警察との連携つよい。自治会からは資金援助を受けている
田尻町 ・ 14000アイの運動、普及が困難 ・ 夕暮れ防犯隊。老人会と連携。 ・ PTAが防犯パトロールを行うことになった。要望が強すぎ、負担が大きくなってしまった。夕暮れ防犯隊の結成へ。 ・ 14000アイの運動に夕暮れ防犯隊も吸収していこうとしている ・ PTA主導。
ヒアリング結果考察 ・活動開始のきっかけ→地域のリーダーに情報が入ること ・ 主体別の特徴→発生犯罪に影響されている ・ 防犯パトロール→活動の継続 ・ 地域でも見守り→地域での普及と活性化 ・ 連携状況→警察との連携→地区内に警察署があるかどうかが影響 ・ 行政との連携→活発ではない(除く・登美丘、田尻)住民の活動ありき
アンケート調査 ・ 登美丘地区での合同パトロールをおこなった ・ 他、資料参照
民間企業による取り組み ・ ホームページの検索によって事例を収集 ・ リフレ岬、日本初のタウンセキュリティ ・ 彩都
タウンセキュリティの実態 ・ 警備員の詰め所があり、人は固定(同じ人)。住民との信頼関係が築ける ・ ホームページの掲示板、生活時間が合わない住民同士のコミュニティ形成の助けになる ・ WEBカメラ、人の目を補完 ・ 警察との連携は、警備会社が行っている ・ 彩都では自治会の立ち上げまでの業務としている
成立条件、利点、導入の経緯(資料参照)
今後への提言 ・ハード整備 ・ソフト促進(推進・継続) ・ 推進体制の整備→特に横の連携が必要
最後に ・ 周辺住民の意識への影響について指標を設ける
質問 ・ 参加者の構成メンバーは調べたのか →調べていない。連携に関係することはあると思う。 ・ 防犯協会、自治体など、行政系の組織は、補助金がでる。そのために名前だけの組織もあるのではないか。 →パトロールが、資金を得るのに必要、という視点は初めてだ。防犯パトロールの数を多くしたいという地域は、犯罪情勢や地域の要請などからの必要にせまられて、であった。 ・ ハードの促進がソフトの活動を停滞させてしまうのではないか →タウンセキュリティについて。リフレ岬ではそのようなことが起こっている。施錠すらしていないケースもあった。彩都ではそういうことはないようだ。もともと防犯意識があるから。 自主防犯組織については、活動自体に付加価値があることが継続につながる。そこに存在意義がある。そのような付加価値のある地域ではハード整備をしたからなくなるというものではない。防犯に特化した活動をおこなっている場合はなくなるかもしれないが。 ・ ハード整備の中身が課題なのではないか ・ それぞれの地区での自治体への加入率は? →伊吹台・90%。町の構成要素に関わるのでは。 ・ マンション世帯、自治体の加入を断られる場合もある ・ 住民の情報の把握や更新難しいのではないか。自治会、警察、社協など連携する必要があるのではないか →今後、個別の課題にあたるためには、住民の情報を把握する必要がある ・ 連合自治会のあり方の検討も課題 ・ 17年度から安心安全ステーション構想始まる(麻生さん提案)全国で100団体指定 防火防災を連携してやるらしい。防火防災と防犯を一緒にやっているところはあったか。 →大阪府はもともとまちづくり活動すくなかった。まちづくりをはじめるきっかけが防犯であるところが多い。既存のコミュニティがなくなっているような地域。防犯だけで手一杯。 ・ 神戸市では防災福祉コミュニティで防犯活動を行っているところもある。安全マップをつくったりして。 ・ 防犯のパトロールの効果を調べたのか? →条件が違いすぎるため、パトロールのみの効果であるということができない。減少しているところもあるが、何が影響したかわからない。外部要因が多いため、犯罪認知件数の増減だけでは効果を判断できない。犯罪件数だけに注目することはよくないと考える。指標としては必要だが。
次回4月16日@KFS | 連絡先:神戸大学北後研究室
TEL 078-803-6440 MURオープンゼミナールは、広く社会に研究室の活動を公開することを企図して、毎月1回、原則として第1土曜日に開催しているものです。研究室のメンバーが出席するとともに、卒業生、自治体の都市・建築・消防関係の職員、コンサルタントのスタッフ、都市や建築の安全に関心のある市民等が参加されています。興味と時間のある方は遠慮なくご参加下さい。 |
Last Updated 10/05/2019 13:48:19 |