第48回MURオープンゼミナール
| 日 時 | 2002年 1月12日(土曜日) 午後1時30分~ | 内 容 | 「災害調査と事故調査」(室崎益輝) | 場 所 | 神戸大学工学部 教室: LR104 | ○災害調査と事故調査に関連して最近感じたことを話します。 ○事故調査と災害調査のちがいなど 事故調査 明石の場合 (人間が悪い。という先入観がある。交通関係、コンビナートなど。「人災」系) 災害調査 地震災害など、主として自然災害 (純粋の自然災害はない。最初の引き金が自然現象) 天災か人災といういいかたはまちがい 新宿の歌舞伎町雑居ビルの場合は? 対策検討委員会報告は出たが、事故調査ではない。 ○どのような目的で、事故調査、災害調査が行われるか。 責任追及を主眼とする場合 原因追求を主眼とする場合 犯人探しがすき。しかし、犯人を明確にすることは、対策につながらない。 原因は単純なものではない。全体像をみて、原因を追求すべき。 一防災学者、一市長の責任としても、よくならない。 責任追及は、⇒補償をだれがするか確定する ⇒厳罰で抑止力とする 原因究明は、⇒事故を引き起こした環境、おおもとを絶つ。 どちらも、再発防止が目的であるが、どちらが再発防止に有効か。 原因が取り除かれて、初めて再発防止ができる。 ○そこで問題なのは、現場についての状況がわからないことがあること → なにも対策がとれない 例えば、 陽気寮の火災の時、「当初、警察の了解がないと中がみれない。」「1週間たって、きれいになってからようやく中が見れた。」「警察の資料は一切みれない。公表されない」 責任追及と原因追求が矛盾する。 明石の場合でも、警察が通報をどのように受けたかなど、明らかにされない。 不利になる情報は出されない。 目的がちがうと、やり方が違ってくる。 例えば、震災後の被害調査(罹災証明、応急危険度判定、倒壊原因究明) ○再発予防のためには 原因究明のためには、疑わしきは、問いただす。 裁判については、疑わしきは、罰せず。 消防の火災原因調査は、再発予防が主眼なのだが、証拠能力を持つので責任追及を引きずっている。 不明としてしまうと、対策につながらない。阪神大震災の時の出火原因など。 ガス漏洩による、出火と同時に大きな火災となったと考えられる例など。 原因究明の立場の報告。裁判の証拠として使われてはならない。 真実にせまる必要がある。真実を語ってもらう必要がある。免責。 原因究明の結果 ⇒ 提言として使われるべき ○科学的な真の原因究明のために 現場の保存(証拠、被災の事実) 聞き語り調査 一種の被災事実の保存 火災の拡がり方 真実に迫る責務 後世に伝えて 再発防止につなげる 証言者の善意を活かす環境をつくる 本当のことをいってくれる必要がある ⇒ 罰せられないという保障がいる。 免責制度。組織が道義的責任を問われるが。 科学的専門性 原因究明する能力、体制を高める必要がある。 独立性をもった調査権が必要 あらゆる権力から独立。 世界には、独立した第三者の調査機関がある。 日本にも、航空機事故についてだけある。 (本当に独立しているか。不十分だが) ○素因、起因、誘因(災害の原因の構造) 素因 もともとの体質 (着火物) 起因 引き金 (火源) 誘因 きっかけ (経過) 一般には、起因だけ着目され、素因、誘因が見落とされがち。 構造的に原因をとらえる必要がある。 行政のチェック機構など、大切にする必要がある。 ○自然要因、技術要因、社会要因(災害の原因の構造) 技術のあり方が問われている。 法律違反の問題だけでは防ぎ得ない。(新宿歌舞伎町ビル火災) ○被害者感情 無視すべき。科学的に原因に迫るべき。 ○配布資料 日本学術会議人間と工学研究連絡委員会安全工学専門委員会、交通事故調査のあり方に関する提言 -安全工学の視点から-、平成12年3月27日. 室崎益輝、被災現場における調査活動の課題と教訓、2002年1月25日、日本建築学会でのシンポジウムで配布を予定している資料(このシンポジウムでは、災害調査のあり方について話し合われる。). | <今後の予定> 第49回は2月実施で、日程は未定です。なお、第50回は3月の予定で、記念して盛大に行いたいと考えています。 |
| 連絡先:神戸大学室崎・北後研究室 TEL 078-803-6009 または 078-803-6440
MURオープンゼミナールは、広く社会に研究室の活動を公開することを企図して、毎月1回、原則として第1土曜日に開催しているものです。研究室のメンバーが出席するとともに、卒業生、自治体の都市・建築・消防関係の職員、コンサルタントのスタッフ、都市や建築の安全に関心のある市民等が参加されています。興味と時間のある方は遠慮なくご参加下さい。 |
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