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第137回

日 時2010年3月20日(土)14:00~17:00
内 容①密集市街地における防災性能評価に関する研究
 -阪神・淡路大震災時の神戸市長田区周辺地域
  における延焼リスク評価を通して-
  黒田良(神戸大学大学院工学研究科建築学専攻)

 地震後の火災の場合、建物があちらこちらで倒壊した状態での市街地火災になるので、倒壊する確率を別途計算して、倒壊した建物は、内部空間が押し潰された建物部分と、内部空間が保持された建物部分のそれぞれの火災性状を計算しました。火災は、気象条件など様々な要因によってその状況が大きく変化します。風が強ければ強いほど、延焼しやすくなりますが、地震や火災がどのような風の状況で起きるかは確率的な事象です。そこで、リスクの概念に基づき、出火条件や気象条件等を不確定なパラメータとし、複数回の試行をモンテカルロシミュレーションとして実行することで、最終的な損失期待値、すなわち延焼リスクを求めることにしました。
 実際の火災は、消防隊による消火活動である延焼範囲に局限化されるのですが、ここでは地震の影響で消火活動が困難になることを想定して、周辺に延焼しなくなるまで最大24時間後の焼失棟数を計算します。出火点は1回の計算につき1箇所を評価領域内でランダムに選定します。リスク評価の単位は町目毎とし、ある町目内で出火した火災によって焼失する全建物棟数をその町目の火災リスクとします。モンテカルロシミュレーションの反復回数は、安定した結果が得られるまで繰り返します。このような計算の仕方でリスク評価の計算対象範囲として、約2.8km×2.5kmの長田区46町目、須磨区34町目、計80町目の範囲を選定しました。この範囲には、24,728棟の建物があり、1995年の阪神・淡路大震災では大規模な市街地火災17件が発生しています。その中で一番大きな市街地火災では、1,164棟の建物、約10ヘクタールの範囲が焼失しています。
 ここで示した方法で、日本各地の密集市街地の延焼リスクを計算すると、それらの地域は阪神・淡路大震災が発生する前の神戸市長田区周辺の市街地と比べて、延焼しやすいかどうかがわかり、単に数量的な予測結果に比べて一般の人々にはイメージがしやすいものとなります。地域の人々によるまちづくりによってこれらの密集市街地の安全化をはかろうとする際に、個々の建物の構造を燃えにくいものとしたり、空き地を設けた場合に、この方法を適用すれば、どの程度、延焼しにくくなるかわかるので、この方法は、密集市街地の安全化の検討支援ツールとして活用できます。

②災害緊急時の医療配置
  飯塚敦(神戸大学都市安全研究センター教授

 地震、津波、集中豪雨などの自然災害の脅威は一向に衰えを知らない。災害に対する考え方の根幹は「人的被害の最小化」である。なかでもDMAT(DisasterMedical Assistance Team、災害派遣医療チーム)は、人的被害最小化に大きく貢献するものであり、災害発生直後 72時間以内のDMATの対応はとりわけ重要である。しかし、このような人の命を守るための医療資源は無限ではない。災害時には、有限な医療資源を効果的に活用するための適切な意思決定が求められる。人的被害最小化に効果的な意思決定を行うためのシステム設計を、工学,医学,理学,情報学の分野の連携で行うことが重要となる。ここでは、その出発点として、いつ、どの被災地にどれだけのDMATを派遣するべきかという意思決定を行う際の判断材料となるような人的被害最小化問題を考える。医療資源(DMAT)の数には制限がある。黄金の72時間以内にDMATを適切に派遣したいが、どこにどれだけの被災者がどのような状態でいるのか、このような情報は災害初期には信頼性が高くはない。しかし時間の経過を経ないと、その情報の信頼性は向上しない。このようなせめぎあいから最適解を見出さねばならない。ここでは、簡単な例題を設定し、このような問題へのアプローチを紹介しました。
場 所神戸大学工学部 (C1-301)
備 考参加者:22名
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