【第170回】2013/03/16 ①震災時の一斉避難・集団行動に起因する問題を考える-ビル避難から帰宅困難問題まで(関澤愛 東京理科大学大学院・国際火災科学研究科・教授)

 東日本大震災では、震源域から遠く離れた東京などの都市においても、多くのビルで全館避難が行われ、多数の避難者がビルの敷地内、あるいはその周辺路上などの街区内に滞留する事態が生じた。さらには、公共交通機関のストップによって、これらの滞留者が大量の帰宅困難者ともなった。このような大規模地震時のビル全館避難、ターミナル駅周辺での滞留、さらには帰宅困難の問題は、それぞれ個別の現象として起きているのではなく、相互に密接に関連した連続的な事象である。これらの問題に通底する課題に焦点を当てて、過去の経験から一歩踏み出して従来の想定を超える現象、事象への対応の必要性について考察が示された。

 高層ビルでは、平常時の火災とは異なる震災時の災害シナリオ、または地震と火災が同時に発生する災害シナリオを想定した、全館一斉避難への対応が今後の課題である。ここでは、避難優先順位、避難誘導方法、避難誘導先、階段における渋滞発生時へのパニック防止等を考慮した計画が求められる。また、震災直後では、交通機関の停止に伴い、多くの帰宅困難者が自動車に頼って移動する可能性があり、都市部道路で大渋滞が予想される。これは、特に同時多発火災発生時には、緊急車両が渋滞に巻き込まれ、消防隊の活動が困難となり、多くの延焼火災が生じることが懸念される。今後、車両を利用する事業者や一般の人たちに対して、震災後数時間は車両による一斉帰宅などの不要不急の移動行動を控えるという、災害時コンサンサスを確立する必要性が示された。

 質疑応答では、同時多発火災に対する帰宅困難者への危険性について問われた。震災直後は地区内残留地区等、延焼火災の恐れが少ない地域にて、建物内に残留させる計画が東京では検討されているように、群集避難が一斉に生じないようにすることが基本であるが、建物からの出火危険・避難困難性も勘案する必要性などについての指摘もあった。


<第170回オープンゼミナール>
■日時:2013年3月16日(土)14:00~17:00
■場所:神戸市役所4号館(危機管理センター)1階会議室
      神戸市中央区江戸町97-1 Tel.078-322-5740
■参加者数:43人

<プログラム> (司会:神戸大学都市安全研究センター教授 北後明彦)

① 震災時の一斉避難・集団行動に起因する問題を考える
  -ビル避難から帰宅困難問題まで-
  関澤 愛 東京理科大学大学院・国際火災科学研究科・教授

② 激震後の全館避難シナリオと混雑度の評価に関する研究
  -東北地方太平洋沖地震後の仙台市内の百貨店における事例を通じて-
  野竹 宏彰  清水建設(株)技術研究所主任研究員
  岩崎 啓太  神戸大学大学院工学研究科建築学専攻博士前期課程

③ 広域避難と帰宅困難
  廣井 悠  名古屋大学減災連携研究センター准教授

【第170回】2013/03/16 ②激震後の全館避難シナリオと混雑度の評価に関する研究-東北地方太平洋沖地震後の仙台市内の百貨店における事例を通じて(野竹宏彰 清水建設(株)技術研究所主任研究員/岩崎啓太 神戸大学大学院工学研究科建築学専攻博士前期課程)


 不特定多数の在館者が想定される商業施設において、大地震時には、屋内の物品散乱や停電等により、全館避難を余儀なくされる可能性が高い。さらに、避難誘導が適切になされない場合、避難時の混雑や混乱による二次災害の危険性も高まることが懸念される。本発表では、激震時の商業施設における避難誘導方策の留意点について検討・考察が示された。まず初めに、ヒアリング調査等で得られた情報に基づき、東北地方太平洋沖地震時の仙台市内の百貨店における避難誘導の状況がシミュレーション上で再現され、次いで、在館者がさらに多い場合を想定し、現状の避難誘導上の課題と、より有効な誘導方策について考察が行われた。
 避難シミュレーションを用いた検討により、階毎に別々の階段を使って全館避難を行う方式を提案し、避難時間の短縮化、階段内の混雑の緩和の観点から、その有効性が確認された。物販店舗には、事務所ビル等と比較して、多数の階段が存在するという特徴があるので、それらをうまく活用すれば、地震時の全館避難においても効率化が図れる可能性がある。そしてその対策の実効性を高めるには、階段へのアプローチ経路の充分な確保等、日常的にも階段の存在・利用を意識づける工夫が重要であることも示された。今後の課題として、避難誘導ルールの単純さを確保しつつ、地震後の火災までをも想定し、状況把握の遅れや出火場所のばらつき等の不確実性にも対応できる誘導手順をいかに構築していくかという点が確認された。


<第170回オープンゼミナール>
■日時:2013年3月16日(土)14:00~17:00
■場所:神戸市役所4号館(危機管理センター)1階会議室
      神戸市中央区江戸町97-1 Tel.078-322-5740
■参加者数:43人

<プログラム> (司会:神戸大学都市安全研究センター教授 北後明彦)

① 震災時の一斉避難・集団行動に起因する問題を考える
  -ビル避難から帰宅困難問題まで-
  関澤 愛 東京理科大学大学院・国際火災科学研究科・教授

② 激震後の全館避難シナリオと混雑度の評価に関する研究
  -東北地方太平洋沖地震後の仙台市内の百貨店における事例を通じて-
  野竹 宏彰  清水建設(株)技術研究所主任研究員
  岩崎 啓太  神戸大学大学院工学研究科建築学専攻博士前期課程

③ 広域避難と帰宅困難
  廣井 悠  名古屋大学減災連携研究センター准教授

【第170回】2013/03/16 ③広域避難と帰宅困難(廣井悠 名古屋大学減災連携研究センター准教授)

 大都市では大量の通勤者が朝夕移動を繰り返すなど、ヒト・モノ・カネ・情報の全てが集まる。この集積は日本の経済・産業をリードする大きなメリットであるものの、ひとたび災害が発生すれば集まることによる様々なリスクが同時に顕在化し、その被害は各所へ波及する。2011年3月11日に首都圏を中心として発生した帰宅困難者問題は、まさにこの典型例といえよう。そして3.11の夜に帰宅困難者問題として東日本大震災で顕在化した各課題は、災害情報の問題をはじめとして、大都市における滞留者の安全確保に関する現状の課題を浮き彫りにするものであった。

 東日本大震災で顕在化した課題として、行政施設など安全な滞留スペースのキャパシティーを超える帰宅困難者が発生したこと、予想以上の大渋滞が発生したこと、情報伝達・情報共有が困難であったこと、ストック不足に伴う物流の機能不全等が挙げられた。また、震災発生時に首都圏にいた人々を対象としたアンケート調査では、およそ8割が当日帰宅できており、その多くの人々は、次に同じ状況になった場合も、同じ行動をするつもりであることが分かった。しかし、東日本大震災時は、首都圏においては、道路・建物・ライフラインへの被害や大規模火災はほとんどなく、鉄道の復旧も早かったことが特徴であることに留意する必要がある。近い将来に発生が想定されている大都市直下地震では、より甚大な被害が予想されており、大量の帰宅困難者が引き起こす「最悪ケース」を踏まえた対策が求められる。具体的には、駅前や歩道橋等における集団転倒・群衆事故の危険性、大渋滞に伴う救急・消火活動の困難性、大規模火災の襲来等に対する対策の重要性が示された。

 対策を図る上では、様々な帰宅困難者について、きめ細かい類型化を行い、類型別の対策対象者の定義(長距離徒歩型、自社滞留者、鉄道移動者等)と規範的ルールの設定、地震規模に伴う対策シナリオ、駅前滞留者を基本とした対策地区の設定、対策の主体の明確化等が必要である。今後の課題として、ハード的対策(建物・市街地)だけでなくソフト的対策(人間行動)、事業所を含めた新しい都市防災(企業を含めた自助・共助)を考慮した大都市避難のあり方を見直す必要性が示された。

<第170回オープンゼミナール>
■日時:2013年3月16日(土)14:00~17:00
■場所:神戸市役所4号館(危機管理センター)1階会議室
      神戸市中央区江戸町97-1 Tel.078-322-5740
■参加者数:43人

<プログラム> (司会:神戸大学都市安全研究センター教授 北後明彦)

① 震災時の一斉避難・集団行動に起因する問題を考える
  -ビル避難から帰宅困難問題まで-
  関澤 愛 東京理科大学大学院・国際火災科学研究科・教授

② 激震後の全館避難シナリオと混雑度の評価に関する研究
  -東北地方太平洋沖地震後の仙台市内の百貨店における事例を通じて-
  野竹 宏彰  清水建設(株)技術研究所主任研究員
  岩崎 啓太  神戸大学大学院工学研究科建築学専攻博士前期課程

③ 広域避難と帰宅困難
  廣井 悠  名古屋大学減災連携研究センター准教授

次回のご案内

<第232回神戸大学RCUSSオープンゼミナール>
■日時:2018年4月21日(土)14時~17時
■場所:神戸市役所4号館(危機管理センター)1階会議室
■司会:神戸大学都市安全研究センター センター長・教授 長尾 毅
■共催:神戸市危機管理室、神戸市消防局
■後援:兵庫県
■プログラム

① 地域における津波時の避難誘導のあり方ー東日本大震災での経験から考える
  北後明彦 神戸大学都市安全研究センター教授
 これまでの津波や今後の南海トラフ巨大地震等が発生した場合の津波からの避難においては、①津波発生情報の避難対象者への伝達と避難誘導、②避難対象者の津波への認識と対応行動、③車避難による交通渋滞発生、④避難経路途上の建築物・橋梁などの地震被害による通行障害、⑤夜間に津波が発生した場合の避難誘導、⑥避難行動要支援者の避難行動支援などが課題となる。本講演では、東日本大震災での津波を経験した要配慮者利用施設や対応にあたった消防団等への聞き取り調査の結果等を紹介しつつ、地域における避難誘導のあり方について示す予定です。

② 災害後の高齢化地域での回復力ー東日本大震災から7年の気仙沼市鹿折の現況(仮題)
  吉田千春 元気仙沼市鹿折まちづくり協議会地域活性化支援員
 東日本大震災から8年目を歩みだしました。私の生活する宮城県気仙沼市鹿折地区は震災前から過疎高齢化地域でした。東日本大震災では火災、津波、主要産業の水産業を中心とした産業がダメージを受け三重苦の被害と評されました。震災後の地域は更に分断、高齢化の加速、過疎化という三重苦を更に背負うことになりました。ハード面回復は進められても、地域を構成する人、人の心の復興はなかなか進んでいないのが現状です。地域のリジリエンスのエネルギーについてお話できればと思います。



今後の予定のご案内

関連する催しのお知らせ

<日本科学者会議兵庫支部フォーラム>
日 時:2018年5月12日(土)13時30分~
場 所:神戸市勤労会館(三宮)講習室403
内 容:記念講演「神戸、この100年間の災害と復興の歴史」
    室崎益輝 兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科長




その後のオープンゼミナールの予定
 一昨年8月の台風10号による水害で岩手県岩泉町の要配慮者利用施設での被災で深刻な人的被害が発生したことを契機とする昨年の6月の水防法・土砂災害防止法の改正により、全国の浸水想定区域や土砂災害警戒区域内の市町村地域防災計画で示された要配慮者利用施設の管理者等は、豪雨時等の避難が必要な際に備えて、各施設ごとに避難確保計画の作成や避難訓練を実施することが義務となりました。神戸市では、危機管理室が主導して各部局と連携して要配慮者利用施設における安全確保を図るとのことです。そこで、5月~7月のオープンゼミナールでは、避難確保計画作成のポイントと避難に係る時間算出、洪水リスクや土砂災害リスクの把握と避難方法の選択、情報を活用した避難開始のタイミング、及び、情報連絡等の留意事項等について各分野から情報提供を行うとともに、計画のあり方についてオープンゼミナール参加者の皆様と議論をして、これらの施設や周辺地域における防災対応力の向上に資することを目指したいと考えています。施設関係者や周辺にお住いの方々をはじめ、ご関心のある皆様方のご参加をお待ちしています。

<第233回神戸大学RCUSSオープンゼミナール>
●2018年5月19日(土)14時~17時 神戸市役所4号館(危機管理センター)
①法改正による要配慮者利用施設における避難確保計画策定等の義務化に係る対応(仮題)
 星野誠治 神戸市危機管理室 危機対応担当課長
②要配慮者利用施設における避難確保計画作成のポイント
 北後明彦 神戸大学都市安全研究センター教授
③要配慮者利用施設における洪水リスクの把握と避難方法の選択(仮題) 
 小林健一郎 神戸大学都市安全研究センター准教授

<第234回神戸大学RCUSSオープンゼミナール>
●2018年6月16日(土)14時~17時 神戸市役所4号館(危機管理センター)
①要配慮者利用施設における土砂災害リスクの把握と避難方法の選択(仮題)
 沖村孝 神戸大学名誉教授、(財)建設工学研究所常務理事
②雨量レーダー等から得られる情報を活用した避難開始のタイミング判断(仮題)
 大石 哲 神戸大学都市安全研究センター教授

<第235回神戸大学RCUSSオープンゼミナール>
●2018年7月14日(土)14時~17時 神戸市役所4号館(危機管理センター)
① 要配慮者利用施設における避難確保計画作成上の留意事項(仮題) 
 宇田川 真之 東京大学大学院情報学環 総合防災情報研究センター 特任助教
②風水害に対応した要配慮者利用施設における避難のあり方(仮題)
 牛山 素行 静岡大学 防災総合センター 教授
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※上記以降は下記の日程・場所でオープンゼミナールを開催する予定です。
●2018年8月18日(土)14時~17時 神戸市役所4号館(危機管理センター)
●2018年9月15日(土)14時~17時 神戸市役所4号館(危機管理センター)
●2018年10月20日(土)14時~17時 神戸市役所4号館(危機管理センター)

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