第172回 RCUSSオープンゼミナール

■日時:2013年5月18日(土)14:00~17:00
■場所:神戸市役所4号館(危機管理センター)1階会議室
    神戸市中央区江戸町97-1 Tel.078-322-5740
司会:神戸大学都市安全研究センター教授 北後明彦
参加者数:52名
■内容:

① 発展途上国におけるジェンダー視点に配慮したコミュニティ防災力向上支援
  斉藤容子 人と防災未来センター 主任研究員
 1981年から2002年までに発生した世界各国の災害では、女性が男性より多く死亡しており、大災害ほど犠牲者数の男女差が大きく、女性の社会経済的地位が高い国ほど災害の犠牲者数の男女差は小さい(Neumayer)。災害は平常時に脆弱な状況に置かれたグループがより深刻な被害を受ける傾向があり、解決にあたって、コミュニティの潜在力を活かして災害に強い社会をつくることが重要である。近年、アジアの発展途上国では災害が多発しており、外部支援によってコミュニティ防災力を向上させるには、住民の人々の参加が大前提でなければならない。そこで、本発表では、男性も女性が地域の災害リスクを軽減するための活動に関わるためにはどのような外部支援の在り方が必要であるかについて、バングラデシュやネパールの事例を通して示された。
 バングラデシュでは、サイクロン時に沿岸部の人々(男女両方)が安全に避難できるようにすることが課題である。女性の避難が遅れる要因として、地域で発令される警報が家にいる女性に届かないことや、避難決定にあたって家族の中の男性の許可を待つ傾向があることが挙げられた。近年、サイクロンシェルターの運営委員を対象に行われたガイドライン作成ワークショップでは、参加者自身がシェルター内に男女別々の部屋を設置し、地域の災害時要援護者リストを作成する重要性を指摘する場となり、女性メンバーの主体的参加やシェルターのオーナシップ意識の向上につながる効果が確認された。意思決定の段階から女性の意見を取り入れた運営は、地域全体の避難体制を促進すると考えられる。
 ネパール、カトマンズ地域の事例では、地区住民参加による地震防災マップ作成に関する事例が紹介された。主な活動内容は、基礎的知識の講義および防災まち歩きに伴うリスクアセスメントマップづくりであり、事後調査にて多くの参加者が避難袋の重要性やコミュニティでの防災対策の必要性を指摘した。また、災害経験のない女性への家具固定・救助トレーニングでは、参加者らがデモンストレーションを通して対策法を学習し、なにをすれば良いのかについて具体的なイメージを醸成することが出来た。
住民が主体となって地域のハザードを認識し、行政と連携を図ってリスク軽減にむけた行動を開始することが、コミュニティ防災力の向上につながる要因として指摘され、支援者はその中でファシリテーション役と智恵の提供を行うことが重要である。国際組織による支援の今後の課題としては、住民との関係性(専門家が現地の地域社会を学ぶ必要性)や現地NGOとの関係性(信頼関係によるサポート体制)が挙げられた。
 質疑応答では、貧困地域の家屋の耐震補強の困難性について問われた。ネパールの事例では、トレーニング活動を通じて参加者自身が自分の家屋の脆弱性を認識することが出来ており、その後の行動が重要課題である。耐震化への関心が向上した地域では、現地NGOの支援に基づき家屋の補強工事が行われている事例が見られており、今後、専門的組織と連携して、耐震化を促進する必要性が示された。

② 化学プラントにおける自衛消防活動のモデルについての考察
-TPMとハイパー自衛消防隊が事故の未然防止を防ぐ-
  山本信一 消防防災ソリューションズ
 人類に豊かな社会をもたらすはずの危険物と言われる物質が、その取扱いを誤ると、牙をむきだしてくる。その結果、火災により尊い人命が失われ、危険物の漏洩・流失により、かけがえのない宇宙に一つしかないといわれるこの地球の山紫水明の緑豊かな自然環境が汚染・破壊されている。これだけ科学技術発達してきているのに、どうして毎年毎年化学工場・化学プラントの火災・爆発、危険物の漏洩・流失が無くならないのだろうか。
 平成23年中、国内における危険物施設の火災・流出事故発生件数は585件である(火災学会誌)。近年発生した事故の特徴は、①異状現象初動時における措置の誤りであり、また、設備の不備により火災を拡大させ被害を増大させていること、②発災事業所の事故後における事業再開の困難があることである。本報告では、昨年発災した化学工場プラントの爆発火災、危険物製造所での爆発火災の事故時の対応、事故後の経過を示し、不測の事態に直面した時に、適切に被害を極限まで小さく抑えることができるソフトパワーとしてのハイパー自衛消防隊を養成して対応することがさらに必要であることについて、現在、養成中の自衛消防隊のモデルの実践例をもって示された。
 化学プラントにおける自衛消防活動は、5S活動(整理、整頓、清掃、清潔、躾)によるTPM(Total Productive Maintenance=全員参加の生産保全)が基本であり、また、シフトタイムにおける勤務引き続きにあたって、各プラントの火災報知受信盤の警戒区域や異常事態発生時の緊急連絡先等を習慣的に毎日確認することも、不測事態に対応するための実践であると指摘された。
 また、近年行われている防災トレーニングの事例として、ロールプレーイング方式訓練や実戦型訓練のメリットが示された。ロールプレーイング訓練の目的は、火災等を想定して、参加者に実際の災害に近い状況を模擬体験させることであり、この訓練は、例えば火災発生時にボヤ程度の小さい火の時に、初期消火または構内通報を先にするか等について、難しい状況判断・優先活動選択を図るための能力を養う上で有効である。また、実戦型訓練では、想定出火プラントに応じて、隣接するプラント群を初期消火班、その周辺のプラント群を応急救護班、そして一番遠いプラント群を安全防護班に分けてトレーニングが進行されるものであり、メリットとして、どのプラントで異常事態が生じても、初動時活動をシステム的に進めることができる体制づくりに役立つことが指摘された。
 質疑応答では、危険物施設の大規模爆発事故等、甚大な災害を想定した周辺地域の住民の避難の判断について議論が行われた。日本やヨーロッパの事例を通じて、原子力発電施設や大規模化学プラントでは、異状現象初動時に有害物資の拡散シミュレーションシステムを用いて避難誘導計画が図られる傾向が示された。しかし、福島第一原子力発電所事故等の事例で見るように、現状では避難勧告の決定基準や発令手法について、明確かつ有効なものがあるとは言えなく、今後、自衛消防活動の中でも、避難勧告等に関する対策を検討課題として取り扱う必要があるとの説明があった。また、津波火災に対する化学プラントの防災対策のあり方も、今後の重要課題として示された。

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次回のご案内

<第235回神戸大学RCUSSオープンゼミナール>

■日時:2018年7月14日(土)14時~17時
■場所:神戸市役所4号館(危機管理センター)1階会議室
■司会:神戸大学都市安全研究センター 教授  北後 明彦
■共催:神戸市危機管理室、神戸市消防局
■後援:兵庫県
■プログラム

① 要配慮者利用施設における避難確保計画作成上の留意事項
 宇田川 真之 東京大学大学院情報学環 総合防災情報研究センター 特任助教
内閣府(防災担当)のモデル事業として全国の要配慮者施設の参考となるように施設管理者や関係行政機関等が連携して編集された「要配慮者利用施設における避難確保計画作成事例集(水害・土砂災害)」の中から、河川氾濫の事例を中心に紹介し、作成過程において検討課題となった事項などを報告します。

② 地域を知り,防災を考える ―最近の豪雨災害事例から学ぶこと―
 牛山 素行 静岡大学 防災総合センター 教授
 我が国の風水害は,被害規模は経年的に激減しているものの,毎年各地で繰り返し発生しています。近年の風水害による人的被害の特徴に関する研究結果を紹介した上で,防災を考える上では地域の災害特性を知ること,様々な災害情報を活用することなどの重要性について論じます。

今後の予定のご案内



その後のオープンゼミナールの予定
 一昨年8月の台風10号による水害で岩手県岩泉町の要配慮者利用施設での被災で深刻な人的被害が発生したことを契機とする昨年の6月の水防法・土砂災害防止法の改正により、全国の浸水想定区域や土砂災害警戒区域内の市町村地域防災計画で示された要配慮者利用施設の管理者等は、豪雨時等の避難が必要な際に備えて、各施設ごとに避難確保計画の作成や避難訓練を実施することが義務となりました。神戸市では、危機管理室が主導して各部局と連携して要配慮者利用施設における安全確保を図るとのことです。そこで、5月~7月のオープンゼミナールでは、避難確保計画作成のポイントと避難に係る時間算出、洪水リスクや土砂災害リスクの把握と避難方法の選択、情報を活用した避難開始のタイミング、及び、情報連絡等の留意事項等について各分野から情報提供を行うとともに、計画のあり方についてオープンゼミナール参加者の皆様と議論をして、これらの施設や周辺地域における防災対応力の向上に資することを目指したいと考えています。施設関係者や周辺にお住いの方々をはじめ、ご関心のある皆様方のご参加をお待ちしています。

<第236回神戸大学RCUSSオープンゼミナール>
●2018年8月18日(土)14時~17時 神戸市役所4号館(危機管理センター)
①組織の安全配慮義務と事業継続計画(BCP)
~大川小学校津波訴訟判決の教訓と防災を自分ごとにする人づくり~ 
 岡本 正 銀座パートナーズ法律事務所 弁護士・博士(法学)・慶應義塾大学講師

東日本大震災で多数の犠牲者を出した石巻市立大川小学校に関する津波訴訟の控訴審判決が今年4月にありました。大川小のほか十数件におよぶ津波訴訟の裁判経過や判決を分析した研究成果をもとに、企業や行政機関が災害時に果たすべき「安全配慮義務」や会社役員の「善管注意義務」とは何かについて、危機管理と防災・減災の視点から教訓を抽出します。具体的に組織の事業継続計画(BCP)や危機管理マニュアルに教訓をどう反映すべきか、組織で採用すべき人材育成や教育研修のプログラムとは何か、について、講師が創設した『災害復興法学』の観点を踏まえつつ解説します。

② これからの消防法学の展望
 山崎 栄一 関西大学社会安全学部教授

 発表者は、2018年6月より月刊消防(東京法令出版)にて「消防法学入門」を連載している。この連載をきっかけに、消防法の世界における二つの大きな特徴と問いが見えてきた。それは、消防法制をコンスタントに研究している行政法学者が皆無であり、消防実務家によって消防法学が発達を遂げているという点である。そのこともあって、消防法の解釈論が数十年前の行政法のテキストに基づいて展開されている。語弊を恐れずにいえば「消防法学のガラパゴス化」ともいえる現象が起こっている。このような状況をどのように評価すべきなのであろうか。新たな消防法学の可能性はないのであろうか。他方、消防業務の多くの部分は、消防法令を常に意識しながら活動をすることが求められており、実務的な視点に基づいた消防法テキスト・実務テキストが多く普及している。そして、これらのテキストに基づいて、消防に関する法務が実施されているのである。同じく語弊を恐れずにいえば「消防法学における実務と学問の遊離」ともいえる現象が起こっている。消防法学における実務と学問の融合はあり得るのであろうか。このような中で、消防職員に対して、どのような法教育を展開すればいいのであろうか。そもそも論として、学問的な視点から法学や行政法学を教える意味が一体どこにあるのであろうか。今回の発表において、今後の消防法学のあり方について、あくまでも試論(かつ私論)ではあるが、発表者の見解を述べる予定である。



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※上記以降は下記の日程・場所でオープンゼミナールを開催する予定です。
●2018年9月15日(土)14時~17時 神戸市役所4号館(危機管理センター)
●2018年10月20日(土)14時~17時 神戸市役所4号館(危機管理センター)
●2018年11月17日(土)14時~17時 神戸市役所4号館(危機管理センター)
●2018年12月15日(土)14時~17時 神戸市役所4号館(危機管理センター)
●2019年1月12日(土)14時~17時 神戸市役所4号館(危機管理センター)
●2019年2月9日(土)14時~17時 神戸市役所4号館(危機管理センター)
●2019年3月16日(土)14時~17時 神戸市役所4号館(危機管理センター)

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