【第170回】2013/03/16 ③広域避難と帰宅困難(廣井悠 名古屋大学減災連携研究センター准教授)

 大都市では大量の通勤者が朝夕移動を繰り返すなど、ヒト・モノ・カネ・情報の全てが集まる。この集積は日本の経済・産業をリードする大きなメリットであるものの、ひとたび災害が発生すれば集まることによる様々なリスクが同時に顕在化し、その被害は各所へ波及する。2011年3月11日に首都圏を中心として発生した帰宅困難者問題は、まさにこの典型例といえよう。そして3.11の夜に帰宅困難者問題として東日本大震災で顕在化した各課題は、災害情報の問題をはじめとして、大都市における滞留者の安全確保に関する現状の課題を浮き彫りにするものであった。

 東日本大震災で顕在化した課題として、行政施設など安全な滞留スペースのキャパシティーを超える帰宅困難者が発生したこと、予想以上の大渋滞が発生したこと、情報伝達・情報共有が困難であったこと、ストック不足に伴う物流の機能不全等が挙げられた。また、震災発生時に首都圏にいた人々を対象としたアンケート調査では、およそ8割が当日帰宅できており、その多くの人々は、次に同じ状況になった場合も、同じ行動をするつもりであることが分かった。しかし、東日本大震災時は、首都圏においては、道路・建物・ライフラインへの被害や大規模火災はほとんどなく、鉄道の復旧も早かったことが特徴であることに留意する必要がある。近い将来に発生が想定されている大都市直下地震では、より甚大な被害が予想されており、大量の帰宅困難者が引き起こす「最悪ケース」を踏まえた対策が求められる。具体的には、駅前や歩道橋等における集団転倒・群衆事故の危険性、大渋滞に伴う救急・消火活動の困難性、大規模火災の襲来等に対する対策の重要性が示された。

 対策を図る上では、様々な帰宅困難者について、きめ細かい類型化を行い、類型別の対策対象者の定義(長距離徒歩型、自社滞留者、鉄道移動者等)と規範的ルールの設定、地震規模に伴う対策シナリオ、駅前滞留者を基本とした対策地区の設定、対策の主体の明確化等が必要である。今後の課題として、ハード的対策(建物・市街地)だけでなくソフト的対策(人間行動)、事業所を含めた新しい都市防災(企業を含めた自助・共助)を考慮した大都市避難のあり方を見直す必要性が示された。

<第170回オープンゼミナール>
■日時:2013年3月16日(土)14:00~17:00
■場所:神戸市役所4号館(危機管理センター)1階会議室
      神戸市中央区江戸町97-1 Tel.078-322-5740
■参加者数:43人

<プログラム> (司会:神戸大学都市安全研究センター教授 北後明彦)

① 震災時の一斉避難・集団行動に起因する問題を考える
  -ビル避難から帰宅困難問題まで-
  関澤 愛 東京理科大学大学院・国際火災科学研究科・教授

② 激震後の全館避難シナリオと混雑度の評価に関する研究
  -東北地方太平洋沖地震後の仙台市内の百貨店における事例を通じて-
  野竹 宏彰  清水建設(株)技術研究所主任研究員
  岩崎 啓太  神戸大学大学院工学研究科建築学専攻博士前期課程

③ 広域避難と帰宅困難
  廣井 悠  名古屋大学減災連携研究センター准教授

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次回のご案内

<第226回神戸大学RCUSSオープンゼミナール>
■日時:2017年10月14日(土)14時~17時
■場所:神戸市役所4号館(危機管理センター)1階会議室
■司会:神戸大学都市安全研究センター教授 北後 明彦
■共催:神戸市危機管理室、神戸市消防局、神戸大学地域連携推進室 ■後援:兵庫県
■プログラム

① 災害時における要配慮者への対応
  -過去の災害における福祉避難所の状況をふまえて-
  大西一嘉 神戸大学大学院工学研究科建築学専攻准教授
阪神・淡路大震災における災害関連死の教訓から、一般避難所の環境改善と共に、福祉避難所等の整備が進められてきた。2016年熊は本地震や、各地で頻発する豪雨災害での福祉避難所調査を踏まえつつ、要配慮者への対応課題を考えたい。


② 特別養護老人ホームにおける災害時要配慮者受け入れとその課題
  -地域社会と協力した福祉避難所開設訓練を実施して-
   中川仁 社会福祉法人愛和会 事務長
2017年1月22日に実施した「福祉避難所開設訓練」では、朝8時半から70名の職員が最終確認を行い、一方で地域の避難所開設訓練にも参加し、要援護者リストに基づく安否確認に協力しました。朝10時に市役所より福祉避難所開設要請の連絡を受けて25名受け入れる想定で開設訓練は始まり、地域の方に要援護者の役を担っていただくだけでなく、突然避難して来られた方や、骨折を疑われる方など「想定外」への対応訓練を行いました。指定避難所、福祉避難所の在り方を地域の方々と共に考えながら、「ひとりも見逃さない防災活動」をめざす私たちの取り組みをご紹介します。

今後の予定のご案内

<第227回神戸大学RCUSSオープンゼミナール>
■日時:2017年11月18日(土)14時~17時
■場所:神戸市役所4号館(危機管理センター)1階会議室
■司会:神戸大学都市安全研究センター教授 北後 明彦
■共催:神戸市危機管理室、神戸市消防局、神戸大学地域連携推進室 ■後援:兵庫県
■プログラム

① 地域に残された災害資料を活用した自主防災活動-災害の記録と記憶の継承事例
  松下 正和 神戸大学地域連携推進室特命准教授
災害を経験した地域には、過去の地震や風水害を記した古文書や記念碑・供養碑、聞き取り記録などの様々な「災害資料」が残されています。報告者がこれまで調査した和歌山県から宮崎県にいたる太平洋沿岸部では、これらの災害資料を活用した自主防災活動に取り組む事例が多くみられます。各地の自主防災組織による活動の具体例を紹介しつつ、ひるがえって我々兵庫県下では災害資料を活用したどのような地域防災が可能なのかを皆さんとともに検討し、防災や復興時に必要となる人文学的な視点についてもお伝えできればと思います。

② 食中毒の予防法
  大路 剛 神戸大学都市安全研究センター准教授
食中毒は食事によっておこるものです。一般には細菌感染による食中毒ばかり注目されていますが、それ以外によるものも、毎年、日本では多く起こっています。また、病原微生物による食中毒の予防法にも誤解が見受けられます。実際の調理現場を意識した食中毒の予防についてお話しします。

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<第228回神戸大学RCUSSオープンゼミナール>
■日時:2017年12月9日(土)14時~17時
■場所:神戸市役所4号館(危機管理センター)1階会議室
■司会:神戸大学都市安全研究センター教授 北後 明彦
■共催:神戸市危機管理室、神戸市消防局、神戸大学地域連携推進室 ■後援:兵庫県
■プログラム

①  防災・減災に資する豪雨シミュレーション研究の紹介
  吉田 龍二 神戸大学都市安全研究センター特命助教
自然災害を引き起こす大きな要因に大雨や台風といった気象があります。これらの現象は、実はまだ理解されていない点もあり、そのため発生や強度の予測が難しい場合や正確でない場合あります。そこで我々は,より安全な社会の実現を目指し、大雨や台風といった現象の研究を進めています。今回はスーパーコンピュータを用いた数値シミュレーションによる研究例をご紹介させていただきたいと思います。

②  新たなステージに対応した防災気象情報の改善
  ~危険度分布、危険度を色分けした時系列情報などの提供を開始~
  山本 善弘 神戸地方気象台 防災管理官
気象庁では、警報級の現象のおそれを積極的に伝える「警報級の可能性」及び気象警報等の危険度を分かりやすくした「危険度を色分けした時系列」の提供を、平成 29 年 5 月 17 日から開始しました。また、雨による災害発生の危険度の高まりを評価する技術(土壌雨量指数、表面雨量指数、流域雨量指数)を活用して、大雨・洪水警報及び大雨特別警報を改善するとともに、「大雨警報(浸水害)の危険度分布」及び「洪水警報の危険度分布」の提供を平成 29 年 7 月 4 日から順次開始しています。平成 29 年 7 月 5 日~6 日にかけて発生した「平成 29 年 7 月九州北部豪雨」や、9 月 17 日に明石市付近に上陸し兵庫県内に大雨をもたらした台風第 18 号など、社会に大きな影響を与える現象について、可能性が高くなくとも発生のおそれを積極的に伝え、迫っている危険度やその切迫度を認識しやすくなるよう、わかりやすい情報を提供していくことを目指しています。これらの新しい情報について、その活用方法などを解説します。


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※上記以降は下記の日程・場所でオープンゼミナールを開催する予定です。
● 2018年 1月20日(土)14時~17時 神戸市役所4号館(危機管理センター)
● 2018年 2月10日(土)14時~17時 神戸市役所4号館(危機管理センター)
● 2018年 3月17日(土)14時~17時 神戸市役所4号館(危機管理センター)

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