【第162回】2012/07/21 ①阪神淡路大震災・東日本大震災の経験から見るジェンダー課題(山地久美子/関西学院大学災害復興制度研究所研究員)

 日本は今、社会全体が東日本大震災の復興に取り組んでいる。このオープンゼミナールでは「ジェンダーと災害復興」(男女共同参画と災害復興)をテーマに復興を考えることにした。
阪神淡路大震災と東日本大震災(激甚被災3県)の被災で犠牲になった方々は高齢者が多く、さらに男性よりも女性が多い(阪神淡路大震災 男性:2,713人・女性:3,680人、東日本大震災 男7,360人・女性:8,363人)。阪神淡路大震災では発災から避難所設営、応急仮設住宅、その後の復興まちづくりにおいて男性が中心となり女性の参画が少なかったといわれている。だが、防災・災害復興での女性参画の重要性が広く認識されたのは10年後に国の防災基本計画に「女性の参画・男女双方の視点」が記載された2005年である。同年12 月には第2 次男女共同参画基本計画へ「防災(災害復興含む)」が新たな取り組みが必要な分野として含まれた。その後、防災基本計画には2008 年に「政策決定過程における女性の参加」が追記され、防災・災害復興におけるジェンダーの視点が広がった。その一方で、第3 次男女共同参画基本計画(2010年閣議決定)では「災害(復興)」は独立した分野とはならなかった。
 このような社会状況の中で東日本大震災は発生した。そこで重要となるのは、(1)防災・災害復興政策決定過程に女性を参画するための工夫、(2)性別による役割の固定化の改善、(3)経済活動へ女性の参画を促進する諸政策、(4)個別のニーズに対応するための全国共通被災者台帳(被災者台帳は阪神淡路大震災時に西宮市役所が作成したシステムほか複数ある)と被災者手帳の構築、である。東日本大震災では43の市町村が復興計画策定の予定である(復興庁・国土交通省統計)が、復興計画の策定に女性は殆ど参画しておらず、専門家会議の場合は男性のみで構成された委員会がある。阪神・淡路大震後の神戸市復興計画審議会では100名の委員中、女性は7名であった(女性委員7%)。このたびの震災ではどうか。仙台市震災復興推進本部会議では16名中3名が女性(18%)であるが専門家(大学教育)は1名であり、目標値の30%は大きく下回っている。これは、復興計画策定後に進捗管理を担う復興計画策定委員会においても同様のことが言える。17年前に兵庫県や神戸市、芦屋市では外国人の声を反映する仕組みを取り入れている。復興に社会の多様性を様々な形で反映するためには、これから何が必要か、阪神・淡路大震災の復興まちづくりの経験を踏まえて考える必要がある。復興は5年、10年、15年と長期にわたって続くのであり、主権者である女性は公的な立場で復興に参画すべきである。さらに、高齢者・障害者・子供・外国人など多様な声を反映する仕組みづくりが必要だ。


<第161回オープンゼミナール>
日時:6月23日(土)14:00~17:00
場所:神戸市役所4号館(危機管理センター)1階会議室
神戸市中央区江戸町97-1 Tel. 078-322-5740(消防)
参加者数:36人
内容:

①阪神淡路大震災・東日本大震災の経験から見るジェンダー課題
 山地久美子(関西学院大学 災害復興制度研究所 研究員)
②火災に関する法規制のあり方
 山崎栄一(大分大学教育福祉科学部准教授)

【第162回】2012/07/21 ②火災に関する法規制のあり方(山崎栄一/大分大学教育福祉科学部准教授)

 建築技術や消防技術が発達したとはいえ、火災事故は依然として起きている。まさに、火災というリスク自身がそれに伴うように成長をし続けているかのようにも見えてしまう。
 火災を事前に予防しその被害の拡大を防止するには、施設・住宅に対して、建物の構造や消防用設備の設置に関する規制等を行うことが一番効果的な方法である。ところが、建築基準法や消防法の基準を遵守していない建物による火災事故というのは後を絶たない。また、法的な規制を強化していても、法的な規制の緩いあるいは及ばない建物への火災事故が発生するわけで、こうなると新たな火災事故と新たな規制強化とのイタチごっこが延々と続けられていくというのが現状である。さらに、建築基準法に関していえば、建築当時の安全基準に従っていればいいわけで、旧来の建物ほど火災リスクを内包させたままとなっているのである。
 建築行政・消防行政というのはいかにして財産権に対して必要最低限の規制で国民の安全を確保するのかという自由国家原理のもとで実施されてきた。そのため、建築行政・消防行政は消極的な活動しかできなかった。建物や消防設備に対する規制の難しさの原因はそういったところにある。
 結論的には、以下のことが示された。①法規制の運用の厳格化が必要であるが、点検・規制に必要な人員(量・質含め)の確保はどうするのかが課題である。②建物の安全性の公表、すなわち基準遵守への心理的圧迫が必要である。
 具体的には、現在どの基準を満たしているのか、いないのかを表示・説明する義務を課し、適マーク制度のような制度を設ける。③補修に関する技術開発・助言を行い、低コストで安全性を確保できるようにする。④建築基準法にも遡及適用を考えていく。具体的には、一定の期間が経過し、安全性が危惧されるようになれば遡及適用を適用する。⑤財政的な支援措置を講ずる。少なくとも、国民の健康・生存に不可欠な建築物には財政支援が行われる必要がある。


<第161回オープンゼミナール>
日時:6月23日(土)14:00~17:00
場所:神戸市役所4号館(危機管理センター)1階会議室
神戸市中央区江戸町97-1 Tel. 078-322-5740(消防)
参加者数:36人
内容:

①阪神淡路大震災・東日本大震災の経験から見るジェンダー課題
 山地久美子(関西学院大学 災害復興制度研究所 研究員)
②火災に関する法規制のあり方
 山崎栄一(大分大学教育福祉科学部准教授)

次回のご案内

<第253回神戸大学RCUSSオープンゼミナール>

日 時:2020年1月25日(土)14時~17時
場 所:神戸市役所4号館(危機管理センター)1階会議室
    アクセス:MAP:http://open.kobe-u.rcuss- usm.jp/p/access.html
     開場13時30分~ 先着順受付(無料、定員90名)
    神戸市中央区江戸町97-1 Tel.078-322-5740
司 会:神戸大学都市安全研究センター 教授 北後 明彦
共 催:神戸市危機管理室、神戸市消防局
後 援:兵庫県

① 2019年台風19号千曲川災害の現状と課題
  吉谷 純一 信州大学工学部 水環境・土木工学科 教授
 令和元年(2019年)10月台風19号は千曲川上流域に豪雨をもたらし、千曲川大臣管理区間で1カ所の堤防決壊、11カ所で越水・溢水、18カ所で内水氾濫が発生した。甚大な被害が発生したこの長野市内での堤防決壊は、立ヶ花観測所で計画高水位を1.69m上回る観測史上最大が原因であり、その最大越流水深は決壊地点での機器管理型水位計により80cmと過去例がないほど大きかったことが確認された。本講演では、最初に、信濃川水系の治水の歴史と計画、及び、千曲川流域での気象水文学的特徴と流域での被害の全体像を述べる。続いて、破堤に関係する立ヶ花狭窄部と穂保での堤防の現状、越流による堤防決壊メカニズムと特徴、氾濫被害のタイプ、住民避難、避難情報、報道の諸事例と課題、今後の千曲川の治水対策について述べる。

② 住む土地を理解して防災対策
  大石 哲 神戸大学都市安全研究センター 教授
 地震災害や火山災害は予測が難しいが、現在の気象観測技術と数値予測(シミュレーション)技術を活用すれば、洪水災害や土砂災害の予測、特に被害予測は可能である。しかし、誰かが住民一人一人に目を配って予測情報や被害情報、あるいは今後の動き方について教えてくれるわけではなく、積極的に情報を取りに行くことが求められる。そこで、本講演では、富山県の事例や、西日本豪雨での事例をもとに土地にあった気象災害情報の活用方法について議論する。

<参考ページ>地域づくりの基礎知識4
http://www.org.kobe-u.ac.jp/kupress/images/05saigaikara.pdf
 http://kobe-yomitai.jp/book/758/
「災害から一人ひとりを守る」北後明彦・大石哲・小川まり子編、神戸大学出版会

今後の予定のご案内

<第254回神戸大学RCUSSオープンゼミナール>
日 時:2020年2月22(土)14時~17時
場 所:神戸市役所4号館(危機管理センター)1階会議室
     開場13時30分~ 先着順受付(無料、定員90名)
      神戸市中央区江戸町97-1 Tel.078-322-5740  
      MAP:http://open.kobe-u.rcuss-usm.jp/p/access.html
司 会:神戸大学都市安全研究センター 教授 北後 明彦
共 催:神戸市危機管理室、神戸市消防局
後 援:兵庫県
内 容:
① 被災者主体の復興まちづくりへ向けて~法制度の課題~
  金子 由芳 神戸大学大学院国際協力研究科・都市安全研究センター教授
 災害後の復興まちづくりは、行政の各部門や専門家が多様な領域から関与する結果、縦割りに陥ってしまう恐れがある。しかし被災者にとっては、「復興」とは、一つの総合的な現象である。安全・生活・地域づくりのすべてが一体として、被災地は再生する。本報告では、「復興」の目標設定を「誰が」「いかに」行うべきかの問いを立て、東日本・アチェ・四川・クライストチャーチの研究協力者との合同調査から論点を引き出し、復興まちづくりの意思決定手続きのあり方について報告する。日本の大規模災害復興法やニュージーランドのCERA法は、一般法規を規制緩和し、迅速かつ大胆な復興事業を可能にする狙いが共通する。しかし、2011年の震災後、東日本でもクライストチャーチでも復興は未完である。他方、アチェのRALASは3年で終了し、四川の復興では3年の計画を2年で完了した。仙台防災枠組が「復興」を焦点化した今、スピードだけではなく、安全と生活を両立する質的な目標達成度、またその前提を為す住民参加の視点で、復興を評価する手法の確立が求められ、更に「復興」の目標の明確な定立のために意思決定手続きの構築が待たれている。


② 事前復興と復興ビジョン
 室崎 益輝 兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科長 神戸大学名誉教授
 阪神・淡路大震災や東日本大震災からの教訓は、暮らしの全体あるいは地域の全体を考えて包括的に取り組まないといけない、被災地の心が一つになるよう議論を重ねて目標を共有しなければならない、そして何よりも、減災と復興の取り組みを災害が起きる前から持続的に進めておくことであった。本報告では、減災のサイクルにおける「事後の復興」と「事前の予防」との関連性や一体性を明らかとするとともに、復興も事後ではなく事前に取り組むべきという脈絡から、事前復興という「事前の復興準備」と「事前の復興事業」の必要性と方向性を示す。復興では、回復をはかる取り組み、減災をはかる取り組み、改革をはかる取り組みの3つが必要となるが、それらの取り組みを包括的に進めるためには、事前の準備として構え(減災の精神、被害軽減のための技能や技術、減災をはかる基盤)と備え(復興の担い手やリーダーの事前確保、用地や資材・物資等の事前の備え、基金や準備金など復興のための財源の準備、計画策定や「復興まちづくり協議会」などの合意形成のプロセスの仕組み・時代と被災者の要請に即した復興の制度)が必要で、その中でも復興の方向性を示すビジョンと復興の可能性を与える復興バネが重要であることを示す。

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※上記以降は下記の日程・場所でオープンゼミナールを開催する予定です。
2020年 3月14日(土)14時~17時 神戸市役所4号館(危機管理センター)
<オープンゼミナールについての問い合わせ先>
 神戸大学都市安全研究センター
 〒657-8501神戸市灘区六甲台町1-1
 TEL:078-803-6440(担当 熊崎、北後)
 TEL: 078-803-6437(センター事務室 山崎)
 FAX: 078-803-6394

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