【第159回】2012/04/21 ①石巻のこどもたちの現状について―子どもが必要とするケアとにじいろクレヨン活動―(柴田滋紀/NPO法人にじいろクレヨン[認証申請中]代表)

東日本大震災は、子どもたちから家屋、学校や遊び場を奪うだけではなく、強い緊張や恐怖、大きな悲しみをもたらした。親や友達との分断による不安や、避難所や仮設住宅の慣れない環境での負担を抱えてきた子どもたちの中には、無気力・無表情な子や、逆に暴力や暴言をぶつける子も少なくはない。そのような子どもたちが健全な精神で成長できるよう、安全に安心して遊べる場を作り、震災のストレス等を発散できる環境を提供することを目的として「NPO法人にじいろクレヨン」が設立された(詳細はhttp://nijiiro-kureyon.jp/を参照)。今回の発表では、団体代表の柴田氏自身が経験した東日本大震災と、避難所から生まれた「にじいろクレヨン」の活動を通して見えた子どもたちの変化と現在の状況、そして今後の課題についてご報告を頂いた。

地震発生直後、当時消防団に務めていた柴田氏は、石巻市文化センターの2階から周辺の河口の異変を覚知し、津波の危険性を懸念した。大津波が来襲したのは消防団として地域住民の避難誘導を行なっている時であった。津波が近くまで押し寄せてくる中、門脇小学校へ向かったという。校舎の周辺では津波で流れてきた車等の衝突によって火災が発生し、ガレキに取り残されている人々等、目の前にいる者を救うのが精一杯な状況で、裏山へ二次避難が行われた。一晩中、救助などの活動に関わり、翌日、日和山の石巻高校避難所で家族と遭遇した。自宅は津波で流され、土台だけが残り、地震発生時に乗っていた消防車や自家用車も壊滅的な状態で、その後発見された。震災後は生活が大きく変わったという。

石巻高校の避難所は表情が失われた子どもや疲れ果てた大人であふれていた。そこで、もともとお絵かき教室を行なっていた柴田氏は、その経験を子どもたちがもつストレスを発散させる活動に活かしたいと考え、震災発生から10日後に「石巻子ども避難所クラブ」(現「にじいろクレヨン」)を設立した。当初、石巻高校に避難していた保育士の協力を得て、手遊びや遊び歌をしているうちに、避難所にいた100人の児童のうち約30人がトレーニング・スペースの一角に集まった。その後、一日に1時間半程遊ぶ時間が決められ、活動が活発となった。最初は折り紙、歌、読み聞かせや鬼ごっこなどが中心であったが、次第に子ども関係の支援物資が届くようになり、フィンガー・ペインティングやお絵描き教室も行われるようになった。子どもたちが初めに描いた絵には濁った色が多く見られたが、次第に暗いトーンが強い絵は少なくなり、色の表現の変化によってストレス発散の効果が現れる作品の事例が紹介された。また、各地からのボランティア団体の協力によって人材が増え、6月までは10箇所の避難所で活動を展開し、その後は仮設住宅へも活動拠点が広がった。活動先によっては保護者の方も参加して楽しまれることも見られた。約1年間にわたる「にじいろクレヨン」の活動を通じて、子どもたちが笑顔を見せるようになったことや、落ち着いて人の話を聞き、自ら家族や学校生活についての話もするようになった等、様々な変化が見られたと指摘した。

宮城県小児保育協会主催セミナー「震災後の子どもと家族のケア」(仙台2012年1月)では、子どもたちが経験した外傷的出来事として、強烈な緊張・自分を圧倒する恐怖感や悲しみ・親との分断による強烈な不安・移転による故郷の喪失等が挙げられた。そこで、子どもの支援につながる取り組みとして、安心安全な環境づくり・日常生活の立て直し・活動の機会の提供・感情を出せる配慮など、長期的なサポートの重要性が示された。しかし被災地には、現状では、継続性がないイベント型活動は多くあるものの、子ども支援を継続的に行う団体は圧倒的に少ない状況であり、長期的な支援の対象となっているコミュニティの数も非常に限られている(石巻市では、2012年4月現在、約130の仮設住宅団地の内、8箇所のみが「にじいろクレヨン」の活動拠点となっている)。集会場や広場等が整備されていない仮設住宅もあり、発散できる場所が見つけられないため、ストレスを貯めている児童も現在にいたって多くいる。

子どもたちには一時的な娯楽だけではなく、長期にわたるサポートが求められており、今後「にじいろクレヨン」の活動を継続していく上では、地域コミュニティーの潜在力を活かし、アートを始めとする子どものケアや教育に取り組むことが重要であると指摘した。地元の方々の特技を活かし、お絵描き・モザイクアート・歌や音楽・お料理教室などが開催される傾向があり、長期的には石巻をアートで盛り上げる活動へ発展することが望まれる。そのためには、地域の住民の協力・参加や各地からの活動支援が必要不可欠であるとの見解が示された。


<第159回オープンゼミナール>
日時:4月21日(土)14:00~17:00
場所:神戸市役所4号館(危機管理センター)1階会議室
神戸市中央区江戸町97-1 Tel. 078-333-0119(消防)
参加者数:32人
内容:
①石巻のこどもたちの現状について
 ―子どもが必要とするケアとにじいろクレヨン活動―

柴田 滋紀 NPO法人にじいろクレヨン(認証申請中)代表
②いのちをつなごう~被災地・非被災地のコミュニティづくり
ロニー・アレキサンダー  神戸大学大学院 国際協力研究科 教授
桂木 聡子 兵庫医療大学 薬学部医療薬学科 講師

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次回のご案内

<第248回神戸大学RCUSSオープンゼミナール>
日 時:2019年8月24日(土)14時~17時
場 所:神戸市役所4号館(危機管理センター)1階会議室
     開場13時30分~ 先着順受付(無料、定員90名)
      神戸市中央区江戸町97-1 Tel.078-322-5740  
MAP:http://open.kobe-u.rcuss-usm.jp/p/access.html
司 会:神戸大学都市安全研究センター 教授 北後 明彦
通 訳:神戸大学地域連携推進室 学術研究員 山地 久美子
共 催:神戸市危機管理室、神戸市消防局
    神戸大学地域連携推進室 減災デザインセンター
後 援:兵庫県
内 容:
①2010年のムラピ火山噴火災害後の再定住への適応(英語:要約逐次通訳あり)
 ~インドネシア・ジョグジャカルタ特別州スレマン県ハンタップでのケーススタディ~ 
Post-disaster resettlement adaptation after 2010 Mt. Merapi eruption: Case study of Huntap, Sleman, Yogyakarta, Indonesia)
 Lini Ocvenety 神戸大学大学院国際協力研究科修士課程元学生
 インドネシアムラピ火山噴火後、コミュニティを基盤として住宅再建した長期にわたる状況について研究をした。噴火後の再建プログラムに参加した居住者と住宅開発過程に焦点をあて、被災前の生活状況と同じようになるようにしていった人々の意思決定過程に影響を及ぼした要因を検証した。噴火後の住宅再建プログラムによる基本的な枠組みによる再建をするとともに長く住み続ける間に、居住する人々や地方政府はどちらも成長し、人々は大家族に対応して住宅拡張を行うとともに(別々の場所にある)複数生活拠点の住み分け行動様式を生み出し、地方政府は市民の安全を守るのと同時に、人々が居住する権利を尊重する規則(定め)を作り出そうしている。(仮訳)
(The research studies about the long-term condition of community-based housing reconstruction after 2010 Mt. Merapi eruption in Indonesia. This study addresses the development process of houses and their users after participating in post-eruption recovery program and also examines what kind of elements affect people's decisions to make their lives resemble their pre-disaster livelihood. The basic service of post-eruption housing program and long time of living there, has develop both people and local government, where people develops multi-family housing extension and multi-habitation activities and local government tries to create regulation to keep citizen's safe yet respect their rights to live.)


②防災を唱えることから始めないコミュニティ防災 〜インドネシア・ムラピ火山地域からの学び〜*
 日比野純一 特定非営利活動法人エフエムわいわい
 インドネシア・ムラピ山麓のいくつかの村落では、一見、防災とは直接関係のない地域活動が、火山噴火や土砂災害など地域が直面する自然災害の脅威への対処を「自分ごと」化していく住民を増やし、それがコミュニティも防災力を高めることに繋がっている。その取り組みから私たちが何を学べることを一緒に考える。


*:<参考ページ>地域づくりの基礎知識4
http://www.org.kobe-u.ac.jp/kupress/images/05saigaikara.pdf
 http://kobe-yomitai.jp/book/758/
「災害から一人ひとりを守る」北後明彦・大石哲・小川まり子編、神戸大学出版会




今後の予定のご案内

<第249回神戸大学RCUSSオープンゼミナール>
日 時:2019年9月14日(土)14時~17時
場 所:神戸市役所4号館(危機管理センター)1階会議室
     開場13時30分~ 先着順受付(無料、定員90名)
      神戸市中央区江戸町97-1 Tel.078-322-5740  
MAP:http://open.kobe-u.rcuss-usm.jp/p/access.html
司 会:神戸大学都市安全研究センター 教授 北後 明彦
通 訳:神戸大学地域連携推進室 学術研究員 山地 久美子
共 催:神戸市危機管理室、神戸市消防局
後 援:兵庫県
内 容:
①大規模災害時のこころのケア**
 曽良 一郎 神戸大学大学院医学研究科精神医学分野 教授
 大規模な自然災害の多くは予測できない出来事であり、行政・医療機関等も被災するため,平時の精神保健・医療のシステムが機能不全に陥るが、DPAT(災害派遣精神医療チーム)の設立により早期の「こころのケア」に対応可能となった。被災直後から回復へのこころの動きとしては、茫然自失期(直後)、ハネムーン期(1週~6ヶ月)、幻滅期(2,3ヶ月~1,2年)、再建期(その後数年間)へと移り変わり、中長期的な「こころのケア」が必要とされる。長期的なストレスが持続することにより不安神経症、うつ病、アルコール依存症などのこころの病気になることもあることから、支援が必要な人の発見とフォローを行うアウトリーチ活動が重要となる。



②大規模災害時の多数傷病者対応***
 西山 隆 自衛隊中央病院 救急科部長
 災害医療は、大規模災害(自然災害、人為災害や多数傷病者発生事案も含む)等により、医療施設の崩壊や多数傷病者の発生により医療の供給と需要のバランスが崩れ、通常の医療体制が維持できないような状況で展開される医療であり、災害拠点病院や災害派遣医療チームといくつかの医療機関が連携する仕組みが階層的に必要になります。また、しばしば災害は行政区などと全く無縁に発生するため、多面的な支援が重要になり組織間連携や組織内連携が重要になります。さらに、近年、テロ等による爆傷・銃創・特殊災害などによる多数傷病者発生時の医療対応も懸念され、今後ますます国際化する我が国において災害時の多数傷病者対応は重要な課題として取り上げていかなければなりません。

*:<参考ページ>地域づくりの基礎知識4
http://www.org.kobe-u.ac.jp/kupress/images/05saigaikara.pdf
 http://kobe-yomitai.jp/book/758/
「災害から一人ひとりを守る」北後明彦・大石哲・小川まり子編、神戸大学出版会
** <第3章> p.49~p.61
 曽良一郎:災害時の心のケアと精神保健体制
*** <コラム> p.66~p.67
 西山隆:南海トラフ巨大地震を想定したこれからの災害医療

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※上記以降は下記の日程・場所でオープンゼミナールを開催する予定です。
2019年10月12日(土)14時~17時 神戸市役所4号館(危機管理センター)
2019年11月16日(土)14時~17時 神戸市役所4号館(危機管理センター)
2019年12月21日(土)14時~17時 神戸市役所4号館(危機管理センター)
2020年 1月25日(土)14時~17時 神戸市役所4号館(危機管理センター)
2020年 2月22日(土)14時~17時 神戸市役所4号館(危機管理センター)
2020年 3月14日(土)14時~17時 神戸市役所4号館(危機管理センター)

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