【第156回】2011/12/17 ①東日本大震災における被災者の生活再建や地域復興に関する調査報告(林大造 | 神戸大学都市安全研究センター特任講師)

 <報告の概要>

都市安全研究センターの震災支援調査活動の一環として実施された、三陸海岸沿岸の岩手県山田町・大槌町、宮城県南三陸町・女川町における被災者の生活再建や地域復興に関するアンケート調査の結果についての報告をいただいた。調査票は避難所及び仮設住宅に配布され、回答は世帯主に依頼された。回収期限は7月18日、配布数は3295通、回収数は912通、回収率は27.6%となった。

震災発生前に住んでいた地区からの移転の意向について尋ねたところ、約5割は「同じ地区に住み続けたい」、約2割は「地区外に移転したい」、約3割は「決めることが出来ない」との回答を示した。この割合は、地域別での回答集計に対しても極端な違いはなく、ほぼ一貫した傾向が見られた。なお、同じ地区に住み続けたい理由としては、主に被災前からの暮らし、住民同士の絆や漁村に関する仕事の継続等が挙げられた。地区外に移転したい場合は、命や財産を守るのため、心情的に住み続けられない、子供や家族の将来のため等が主な理由として挙げられた。また、移転の意向について決めることが出来ない主な理由としては、行政による移転に伴う補償や支援がどの程度かが決まっていない事、津波浸水地域での住宅の再建がどの程度危険なのかが分からない事等であった。

今後の住まいの見通しについて尋ねたところ、7月の段階で「自力で住宅再建」と回答した世帯は67世帯(約1割)のみであった(その他9割は仮設住宅に応募中・入居決定等と回答した)。その内、65世帯の住宅は津波で流失・損壊しているが、42世帯が「同じ地区に住み続けたい」との意向を示した。甚大な被害を受けているが、自力再建の意向がある場合、地区外に移転する傾向は少ないと見られた。

世帯主の従前職種別での地区転居に関する意向については、「養殖漁業」や「採捕漁業」の場合、それぞれ約7割が「同じ地区に住み続けたい」と回答しており、職住接近を重視した上で、同じ地区で再建を希望する世帯の割合が最も多い職種である(「水産流通・加工業」の場合は約5割、「派遣・アルバイト」「会社員」の場合はそれぞれ約4割が「同じ地区に住み続けたい」と回答した)。

住宅の高台移転の志向について尋ねたところ、地区移転の意向が「同じ地区に住み続けたい」である場合、約4割が「近隣の後背地への分散型高台移転」(以下、近隣・分散型移転)、約3割が「少し遠くても広大な高台への集結型高台」(以下、広大・集約型)を支持している。一方、移転の意向として「地区外に移転したい」と示している世帯の場合、住宅の高台移転の志向については、「近隣・分散型」と「広大・集約型」の双方に平等に約5割の支持が見られた。地区移転に関する意向が決めることが出来ない場合の世帯については、「近隣・分散型」と「広大・集約型」の双方に平等に約4割の支持が示された。

また、事業者に対して、事業の再開状況を尋ねたところ、約15%が「すでに再開している」、約8%が「再開を予定している」、約50%が「再開の時期は見確定である」、約28%が「廃業した」と回答した。事業を再開する上で課題となっていることについて尋ねたところ(複数回答)、約55%は「設備の復旧」、約37%は「資金の不足」を示しており、いずれも各再開状況で共通する問題である。次いで、約33%は「事業場所」、約20%は「復興計画」に関する問題を挙げており、これらの課題は主に再開を予定している場合(再開時期が見確定である場合も含む)に多く見られる。また、廃業している場合は、「復興計画」を除き、上記の課題に加えて「後継者問題」が挙げられた。約13%の事業者が「後継者問題」を認識しているが、その内11%は廃業している事業者に該当する。一方、すでに再開している場合、「従業員確保」という、他の再開状況では見られない課題が浮上した。この課題を認識している事業者は約3%のみであるが、「すでに再開」と示している場合の事業者の内、約9割が認識してる課題である。
事業の再開状況別で、地区移転の移転について「同じ地区に住み続けたい」と回答した割合を見ると、すでに再開している場合は約46%、再開を予定している場合は76%、再開の時期は見確定である場合は約65%、廃業した場合は57%であった。ここでは、震災前から事業をしている場合、同じ地域に住み続けたいとの意向が比較的に高くなる事が明らかになった。

最後に、住宅の所有形態について尋ねたところ、約7%が「借地借家」、約3が「借地・持家」、約83%が「特地・特家」、約2%が「民間住宅」、約4%が「公的住宅」、約1%がその他との回答を示した。所有形態別で、地区移転の移転について「同じ地区に住み続けたい」と回答した割合を見ると、「借地借家」の場合は46%、「借地・持家」の場合は27%、「特地・特家」の場合は52%、「民間賃貸住宅」の場合は19%、「公的住宅」の場合は43%、「その他」の場合は67%であった。


<第156回オープンゼミナール>
日時:2011年12月17日(土)14:00~17:00
場所: 神戸大学工学研究科 C1-301
内容:
神戸大学都市安全研究センター特任講師 林大造
新潟大学災 害・復興科学研究所 特任准教授 福留邦洋
参加者:26人 (北後)

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次回のご案内

<第232回神戸大学RCUSSオープンゼミナール>
■日時:2018年4月21日(土)14時~17時
■場所:神戸市役所4号館(危機管理センター)1階会議室
■司会:神戸大学都市安全研究センター センター長・教授 長尾 毅
■共催:神戸市危機管理室、神戸市消防局
■後援:兵庫県
■プログラム

① 地域における津波時の避難誘導のあり方ー東日本大震災での経験から考える
  北後明彦 神戸大学都市安全研究センター教授
 これまでの津波や今後の南海トラフ巨大地震等が発生した場合の津波からの避難においては、①津波発生情報の避難対象者への伝達と避難誘導、②避難対象者の津波への認識と対応行動、③車避難による交通渋滞発生、④避難経路途上の建築物・橋梁などの地震被害による通行障害、⑤夜間に津波が発生した場合の避難誘導、⑥避難行動要支援者の避難行動支援などが課題となる。本講演では、東日本大震災での津波を経験した要配慮者利用施設や対応にあたった消防団等への聞き取り調査の結果等を紹介しつつ、地域における避難誘導のあり方について示す予定です。

② 災害後の高齢化地域での回復力ー東日本大震災から7年の気仙沼市鹿折の現況(仮題)
  吉田千春 元気仙沼市鹿折まちづくり協議会地域活性化支援員
 東日本大震災から8年目を歩みだしました。私の生活する宮城県気仙沼市鹿折地区は震災前から過疎高齢化地域でした。東日本大震災では火災、津波、主要産業の水産業を中心とした産業がダメージを受け三重苦の被害と評されました。震災後の地域は更に分断、高齢化の加速、過疎化という三重苦を更に背負うことになりました。ハード面回復は進められても、地域を構成する人、人の心の復興はなかなか進んでいないのが現状です。地域のリジリエンスのエネルギーについてお話できればと思います。



今後の予定のご案内

関連する催しのお知らせ

<日本科学者会議兵庫支部フォーラム>
日 時:2018年5月12日(土)13時30分~
場 所:神戸市勤労会館(三宮)講習室403
内 容:記念講演「神戸、この100年間の災害と復興の歴史」
    室崎益輝 兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科長




その後のオープンゼミナールの予定
 一昨年8月の台風10号による水害で岩手県岩泉町の要配慮者利用施設での被災で深刻な人的被害が発生したことを契機とする昨年の6月の水防法・土砂災害防止法の改正により、全国の浸水想定区域や土砂災害警戒区域内の市町村地域防災計画で示された要配慮者利用施設の管理者等は、豪雨時等の避難が必要な際に備えて、各施設ごとに避難確保計画の作成や避難訓練を実施することが義務となりました。神戸市では、危機管理室が主導して各部局と連携して要配慮者利用施設における安全確保を図るとのことです。そこで、5月~7月のオープンゼミナールでは、避難確保計画作成のポイントと避難に係る時間算出、洪水リスクや土砂災害リスクの把握と避難方法の選択、情報を活用した避難開始のタイミング、及び、情報連絡等の留意事項等について各分野から情報提供を行うとともに、計画のあり方についてオープンゼミナール参加者の皆様と議論をして、これらの施設や周辺地域における防災対応力の向上に資することを目指したいと考えています。施設関係者や周辺にお住いの方々をはじめ、ご関心のある皆様方のご参加をお待ちしています。

<第233回神戸大学RCUSSオープンゼミナール>
●2018年5月19日(土)14時~17時 神戸市役所4号館(危機管理センター)
①法改正による要配慮者利用施設における避難確保計画策定等の義務化に係る対応(仮題)
 星野誠治 神戸市危機管理室 危機対応担当課長
②要配慮者利用施設における避難確保計画作成のポイント
 北後明彦 神戸大学都市安全研究センター教授
③要配慮者利用施設における洪水リスクの把握と避難方法の選択(仮題) 
 小林健一郎 神戸大学都市安全研究センター准教授

<第234回神戸大学RCUSSオープンゼミナール>
●2018年6月16日(土)14時~17時 神戸市役所4号館(危機管理センター)
①要配慮者利用施設における土砂災害リスクの把握と避難方法の選択(仮題)
 沖村孝 神戸大学名誉教授、(財)建設工学研究所常務理事
②雨量レーダー等から得られる情報を活用した避難開始のタイミング判断(仮題)
 大石 哲 神戸大学都市安全研究センター教授

<第235回神戸大学RCUSSオープンゼミナール>
●2018年7月14日(土)14時~17時 神戸市役所4号館(危機管理センター)
① 要配慮者利用施設における避難確保計画作成上の留意事項(仮題) 
 宇田川 真之 東京大学大学院情報学環 総合防災情報研究センター 特任助教
②風水害に対応した要配慮者利用施設における避難のあり方(仮題)
 牛山 素行 静岡大学 防災総合センター 教授
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※上記以降は下記の日程・場所でオープンゼミナールを開催する予定です。
●2018年8月18日(土)14時~17時 神戸市役所4号館(危機管理センター)
●2018年9月15日(土)14時~17時 神戸市役所4号館(危機管理センター)
●2018年10月20日(土)14時~17時 神戸市役所4号館(危機管理センター)

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